ワインとシエスタとフットボールとBACK NUMBER
中継されなかったU-18のベトナム戦。
トルシエ監督に聞いたドローの真実。
text by
田村修一Shuichi Tamura
photograph byGetty Images
posted2019/12/01 11:30
マカオ代表、シンガポールU-16代表など海外のチームを率いたこともある影山雅永監督。2017年から日本代表のユース世代の監督を務めている。
日本らしく戦えば5-0で勝っていた試合。
――その通りで、守備でのミスはほとんどありませんでした。
「後半に日本のヘディングが1本あった」
――櫻川ですね。しかしそれ以外は……。
「われわれも何度かチャンスを作った。前半にも素晴らしいクロスを入れて、もし倒れこんでいたら大きなチャンスだった」
――カウンターの際も、日本はひとりを2~3人で囲い込みにいきましたが、ベトナムの選手が狭いスペースでもボールをキープできるのでちょっと持て余していました。
「自信を持ってプレーをしていれば、さらに日本を苦しめることができた。ただ、すべては一歩ずつ、ステップバイステップだ。私は日本のコロンビア戦やスペイン戦、ベルギー戦を見たが素晴らしかった。昨日の試合でも日本が自分たちのプレーをしていたら5対0で勝っていただろう。逆にベトナムが自分たちのプレーをしようとしても5対0で敗れていただろう」
――では日本の選手たちをどう見ましたか。サイドをブロックされると攻撃手段を失い、アグレッシブさも足りませんでした。
「ブロックされたときにどうしたらいいかわからず、他の解決策を見出せなかった。そこはもっと様々なやり方を深めていかねばならない。チームはシステムを変えることもできるのだから」
――後半も日本はほとんど戦い方を変えませんでした。選手はひとり交代しましたが……。
「彼(武田英寿)は素晴らしい選手だ。8番(鮎川峻)もまた素晴らしかった」
――しかしそれでも十分ではなかった。
「彼らの前に壁を作った。壁を突き破るのは簡単ではない。君も驚いたのではないか。われわれがこんな風にやってくるとは思わなかっただろう」
――正直に言って予想した以上でした。同時に日本のパフォーマンスにはちょっとがっかりで、潜在能力は高いけれどもまだまだ若くナイーブでした。
「そうだが、フィジカルでもテクニックでも経験でも日本は高いレベルにある」
個々では小野世代。組織では現代表の方が……。
――では小野(伸二)や高原(直泰)、稲本(潤一)らの世代と比べて昨日のチームはどうでしたか?
「昨日のチームの方がコレクティブだ。個々の才能の面では私のチームの方が、違いを作り出せるタレントが揃っていた。本山(雅志)は俊敏な動きでブロックに穴を開けられたし、伸二はパスでも個人技でも相手を崩せた。彼は当時から高い評価と名声を得ていたし、稲本も名前が知られていた。高原は9番として素晴らしかった。あのチームの方が強かったのは間違いない。
繰り返すが、昨日のわれわれはプレーはせずにずっと待っていた。プレーをしていたら敗れていたのは間違いない。だから戦うこともできなかったし勝てなかった。
だが日本は、フランスと戦っても自分たちのプレーをする。昨日の1試合だけで日本を判断できない。ベトナムが日本を封じ込めてしまったから彼らは驚いたが、それ以上は望むべきではない。10回戦っても勝てないのは、われわれもよくわかっている」