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五輪代表唯一の大学生・田中駿汰。
ボランチ競争で生き残るために。
text by
林遼平Ryohei Hayashi
photograph byGetty Images
posted2019/11/21 07:30
堂安律(左)とは中学時代のチームメイトだったという田中駿汰。コロンビア戦ではアピールならずも、代表争いに前向きなコメントを残した。
長身ボランチが目指すはモドリッチ。
「まずユースに上がりたかったけど、上がれないという形になってしまった。でも、そんなに腐らず、高校でしっかりやってプロにいければという気持ちでいた。ただ、高校卒業の時もその実力はまだなくて、大学進学を選びました」
大きく成長を遂げたのは大学に入ってから。「気持ちを切り替えて大学4年間でしっかり力をつけよう」と決意すると、「あえてというか、自分に足りないところを成長させる上で自分のスタイルとは全然違う」大阪体育大学に進んだ。
すると、攻守にたくましさを増してみるみる力をつけていき、大学3年時にはセンターバックとしてチームの中心となり勝利に貢献。守備的なポジションをポリバレントにこなすだけでなく、高身長な上に足元の技術にも優れ、冷静沈着なパス捌きから一本の縦パスで状況を打開するような選手へと成長を遂げた。
また意外なのは、後方でボールを捌くエレガントさが特徴の選手と思っていたが、自身のボランチの理想像を自身より背の低いモドリッチと言い切ったことだ。
「ビルドアップをしつつ、自分でゴールに直結するようなプレーができないといけないと思っていて、そうすればもっと幅が広がるのかなと。モドリッチはビルドアップができるし、ミドルシュートを打ったり、前に出て行って得点にも関われる。そういうプレーは自分のこれからの課題になってくると思います」
華麗さを備えながら、より攻撃に特徴を持つプレイヤーへのさらなる進化を目指している。
成長を後押しした仲間の存在。
一方で、大学からプロを目指す中で何度も心が折れそうな時があった。ただ、その度に再び前を向くことができたのは、ジュニアユース時代の仲間たちがトップの舞台で輝く姿があったからだと田中は言う。
「僕が高校の時もユースで(初瀬)亮や(市丸)瑞希、高木彰人や(堂安)律が活躍していた。また僕が大学に入った時には、みんなもうプロでプレーしていた。そこに嫉妬心ではないけど、羨ましさとかはありましたね。でも、いつか絶対同じピッチでやれるようにというのはいつも考えていた。それがここまで続けてこられた気持ちの部分かなと思います」