プロ野球亭日乗BACK NUMBER
「動くボール」攻略は3人だけ……。
プレミア12米国戦敗北で見えたもの。
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byNanae Suzuki
posted2019/11/13 12:00
8回、二塁打を放った鈴木は浅村の左前安打でホームに生還、1点差に迫ったが……。
いまさらだが、逆方向に打ち返す意識を。
指揮官のこの言葉には、いまさらの感を否めないではないが、このコラムでも大会の最初に指摘した通りに動くボールを攻略するには、ポイントを引き付けて逆方向に打ち返す意識が求められるということだ。
侍打線の中でこの打撃ができているのは浅村に、3番を任される近藤あたりということになる。
特に近藤は大会通算安打はわずか3本と少ないが、ここまで5試合で選んだ四球は敬遠を含めて8個もある。最後まで動くボールの見極めができていることで、ヒットは打てなくても出塁率は実に5割と高い数字を維持している。
鈴木誠也は足の上げ方などを工夫。
一方、2つ目のタイプは前さばきの打撃スタイルでも適応力の高さで対応しているタイプで、これが鈴木や菊池なのである。
今大会で4番を任され絶好調の鈴木は、決してボールを呼び込んで逆方向へという打撃スタイルではない。ただ、それでも動くボールに対して自分なりに足の上げ方を工夫したり、様々な対応策を講じてしっかりとタイミングを取れていることが、好結果の要因だ。
一方の菊池は国際大会の経験も豊富で、ある程度、割り切って狙い球と打つ方向を決めて対応できている。
だからその狙いが外れたときには、非常に淡白な凡退をすることもあるが、右方向に打つと決めたら右方向をしっかり狙い、時には強引に引っ張ると決めて三遊間に強い当たりも飛ばせる。その割り切りと対応能力の高さで初見の投手の続くこの大会でも3割1分6厘のハイアベレージを維持しているというわけである。
「今に始まったことじゃないですからね」
この対応できている打者とできていない打者が明確に分かれる現状に対する金子誠ヘッド兼打撃コーチの分析はこうだった。
「足を上げるバッターが足を上げている間に差し込まれたり、そういうことは前からわかっていること。でもそれぞれにバッターのタイプがあるから、一概に右に打てと言ってもそれでむしろ自分のフォームを崩したり、強く振れなくなったりすることも考えられる」