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フェンシングの挑戦はまだ序章。
想像を超えた全日本選手権の光景。
text by
田中夕子Yuko Tanaka
photograph byYUTAKA/AFLO SPORT
posted2019/11/06 18:00
LINE CUBE SHIBUYAで行われた全日本選手権。選手たちのプレーはもちろん、あらゆる演出で観客を楽しませた。
「東京では“強い見延”を」
あくまで主役は選手。とはいえ、見方によっては準決勝から決勝まで1カ月以上空くことや、ウォーミングアップの時間を十分に取りきれないこと。これまでの常識やアスリートの意見や要求のみを主張するならば、決して満足な環境とは言い難いかもしれない。
だが、さまざまな策を打ち出し、より多くの人にフェンシングを発信することで、初日は1422名、2日目は1776名が会場へ詰めかけた。そして、その前で勝者、敗者を問わず、最高のパフォーマンスを発揮する選手を、鳴り響く歓声や拍手で称える空間。
それこそが「アスリートファースト」であり「オーディエンスファースト」。太田会長のみならず、選手会長の見延もこう言った。
「応援はすごく力になりますが、慣れないとそれをプレッシャーに感じることもある。でも今回この舞台で戦えたことで、“オリンピックもきっとこんな風に応援してくれる”という準備ができました。東京オリンピックでは“強い見延”をお見せしたい。オリンピックが、ますます楽しみになりました」
すべてが終わると、会長として行うのは、壇上で仰々しく挨拶するのではなく、ロビーに立ち、同じ目線で来場者と握手し、感謝を伝えながら見送ること。
太田が言った。
「時間やテンポ、どういう設計にしていくのかは今後の課題です。でも僕たちは失敗を許容しながら、失敗を未達ととらえて、引き続きチャレンジしたいと思っていますし、こんな素晴らしい全日本は、2、3年前までは考えられなかった。非常に、いい大会になったのではないかと思います」
目的をぶらさず、挑戦を続ける。未来を見据えた改革は、まだまだ序章に過ぎない。