月刊スポーツ新聞時評BACK NUMBER
デイリーが鳥谷裏面でもノーサイド!
札幌に豊洲のブーメランが飛んだ10月。
text by
プチ鹿島Petit Kashima
photograph byNaoya Sanuki
posted2019/10/31 20:00
あのデイリーや東スポも一面で報じたラグビーW杯。各紙、趣向を凝らした見出しで偉業を伝えていた。
ザワザワした札幌移転問題。
さて、ワクワクの次はザワザワだ。それを伝えるのもスポーツ紙の真骨頂である。10月17日、各紙は一面で一斉に“驚いた”。
『マラソン&競歩 えっ、札幌』(スポニチ)
酷暑が予想される来年の東京五輪でマラソン、競歩の開催を札幌へ変更という案。IOC(国際オリンピック委員会)が検討という。
このあとIOCはさらに仰天プランを提案とスポニチは報じた(10月26日)。
・激走後すぐ空路移動
・オープンバスでパレード
・東京で表彰式
これらの案はマラソンを見ることができない都民への配慮というが、スポニチは、
《そもそも、札幌移転は暑さによる選手の健康面への影響を懸念してのもの。「疲れた選手を移動させて都民に見せることがアスリートファーストなのか」と議論を呼びそうだ。》
と指摘。まったくだ。アスリートファースト、都民ファースト、いろんなファーストがたくさん。
豊洲のブーメランが札幌から。
また、札幌移転に関わる費用の負担について『札幌五輪マラソン 都税も』と一面で“大声で”叫んだのは日刊スポーツ(10月26日)。混沌とした雰囲気を味わうには一般紙よりやはりスポーツ紙がいい。
今回の札幌変更案に関して「蚊帳の外」に置かれたという小池都知事への世間の同情はあまり感じない。これを的確にツッコんだのはニッカンの名物コラム「政界地獄耳」。匿名「K」氏が書く社会派コラム。
『蚊帳の外 百合子も同じことしてる』(日刊スポーツ10月21日)
《小池自身も築地の市場から豊洲に移転する計画を突如延期するなど、市場に働く人や議会を通さずトップダウンで決めてきたし、そこで批判を浴びてきた。》
《小池の怒りはわかるものの、同時に豊洲の時にやられた人の気持ちも理解しなければいけない。》
ああ、豊洲のブーメランが札幌から来たのか。
森喜朗(五輪組織委員会会長)vs.小池百合子(都知事)。この戦いの、どちらにも共感できないモヤモヤ感はこういう部分にもあったのだ。
スポーツ紙の社会面にあるコラムもおススメです。
以上、今月のスポーツ新聞時評でした。