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大関の「クンロク」は本当にダメか。
やけに巨大な責任を負う損な地位。 

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西尾克洋

西尾克洋Katsuhiro Nishio

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photograph byKyodo News

posted2019/11/04 11:50

大関の「クンロク」は本当にダメか。やけに巨大な責任を負う損な地位。<Number Web> photograph by Kyodo News

再び大関として11月場所に挑む貴景勝。横綱を目指すとなればハードルは上がるが、まずはその地位に定着してほしい。

横綱が増えれば勝ちは減る、という当然。

 この数字から分かることは、大関の成績は横綱大関の人数で大きく変化するということだ。

 例えば、9月場所の豪栄道を例に取ってみよう。

 白鵬と鶴竜は途中休場、高安は全休だったので、大関との対戦は栃ノ心のみだった。この状況で平均成績に当てはめて豪栄道の成績の期待値を算出すると、以下のようになる。

(大関1人×0.5)+(関脇2人×0.57)+(小結2人×0.6)+(平幕10人×0.75)=10.34

 つまり先場所の豪栄道は、10勝以上が期待される状況だったというわけだ。

 ただ、上位力士が全員出場すると状況は一変する。横綱2人、大関1人が増え、平幕との対戦が3人分減るとどうなるか。

(横綱2人×0.31)+(大関2人×0.5)+(関脇2人×0.57)+(小結2人×0.6)+(平幕7人×0.75)=9.21

 上位がフル出場したと仮定すると、大関の15日間の期待値は9勝といったところに落ち着くのである。

4横綱4大関だと、8勝でも悪くない。

 更に極端な例だと、昭和62年九州場所は4横綱4大関という場所だった。この場所に大関だった旭富士の期待値を算出すると、さらに数字は低下する。

(横綱4人×0.31)+(大関3人×0.5)+(関脇2人×0.57)+(小結2人×0.6)+(平幕4人×0.75)=8.08

 なんと、上位力士が充実している時期の大関の期待値は、ギリギリ勝ち越しという水準まで低下するのだ。

 実際には、旭富士は同部屋での上位対戦回避が無かったのでフル対戦を行って、11勝4敗で終えている。同じ大関の朝潮と小錦が8勝7敗、北天佑が9勝6敗だったことを考えると、この数字が如何に優秀かお分かりいただけると思う。

【次ページ】 月給では、大関は関脇の1.4倍もない。

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