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大関の「クンロク」は本当にダメか。
やけに巨大な責任を負う損な地位。 

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西尾克洋

西尾克洋Katsuhiro Nishio

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photograph byKyodo News

posted2019/11/04 11:50

大関の「クンロク」は本当にダメか。やけに巨大な責任を負う損な地位。<Number Web> photograph by Kyodo News

再び大関として11月場所に挑む貴景勝。横綱を目指すとなればハードルは上がるが、まずはその地位に定着してほしい。

大関の平均は9.5勝である。

 だが、この批判は本当に正しいのだろうか。

 相撲ファンが大関に求める水準は、実際の成績を反映したものとは言いがたい。果たして、大関というのはどの程度の成績を期待してよい地位なのだろうか。

 最高位の横綱の1つ下の地位であり、関脇や小結よりはもちろん高いハードルが求められる。英語だと横綱がGrand Championであるのに対して大関はChampionである。

 そこで年6場所制となった1958年以降の大関の平均勝率を計算したところ、6割3分5厘であることがわかった。6割3分5厘というと分かりづらいが、1場所に換算すると約9.5勝という計算である。

 つまり大関の平均成績は「クンロク」そのものだったのだ。

「最近の大関は弱い」という批判の声も聞くので、これについても検証した。

 大関の平均成績には周期的な変化が見られるが、上位力士が年齢とともに衰える過渡期に成績が落ちる影響が大きく、平均成績の低下傾向は見られない。昔からほぼ同じ水準、平均9.5勝の前後を行ったり来たりしているのである。

 また、最高位が大関だった中で突出した成績を残しているのは魁皇、千代大海、栃東、小錦といった力士たちだが、全員が6場所制移行後としては近年の力士である。彼らに続く若島津と北天佑も、時期的に言えばそれほど古い部類の力士ではない。

大関は80%以上勝ち越している。

 また大関が10勝以上しているケースは、全体の44.6%だった。9勝6敗は20.2%、8勝7敗は15.4パーセントなので、勝ち越しの確率は80%以上。途中休場を入れても、負け越しの割合が2割以下というのもまた驚きだ。

 次に、大関の平均勝率を対戦する力士の地位別で見てみよう。

 対横綱戦の勝率は、やはり31%とかなり低い。

 対大関の勝率は当然50パーセントだが、問題は対関脇・小結だ。関脇戦の勝率は57%、小結戦は60%だ。大関と関脇・小結との実力は給料同様に、相当拮抗しているのである。相手が平幕になると勝率が75%に跳ね上がることを考えると、関脇・小結との対戦が「勝って当然」ではないことがお分かりいただけると思う。

【次ページ】 横綱が増えれば勝ちは減る、という当然。

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