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大関の「クンロク」は本当にダメか。
やけに巨大な責任を負う損な地位。
text by
西尾克洋Katsuhiro Nishio
photograph byKyodo News
posted2019/11/04 11:50
再び大関として11月場所に挑む貴景勝。横綱を目指すとなればハードルは上がるが、まずはその地位に定着してほしい。
月給では、大関は関脇の1.4倍もない。
少し話は逸れるが、月給ベースで関脇と大関を比較すると、関脇の180万円に対して大関は約250万円である。
力士報奨金や懸賞金が付くので実際はこれ以上の額になるのだが、収入の差に対して、地位に伴う責任の差があまりに大きいようにも感じる。
立合いで変化したりラフな相撲を取ったりと、関脇以下の力士であれば問題視されないことでも、大関では批判を受けることもある。勝ちの内容が求められるのも大関という地位なのだ。
逆に、変化に屈したり投げでひっくり返されたりと印象に残る負け方をしても、批判の対象になりやすい。
近年では、大関時代の稀勢の里がその典型である。12の勝ちよりも3つの負けが論じられる、なんとも報われない地位なのだ。
印象論を数字で証明しよう。
大相撲は数字を元に語られることが少なく、「クンロク」のような価値基準の妥当性が再検証されることは少ない。
本当に春場所は荒れるのか、ツラ相撲は連勝連敗が多いのか。
イメージと現実の乖離が生じているのであれば、数字によって誤解を解くことができるはずだ。逆に、印象論が数字によって立証されることもあると思う。今後もこのような検証は積極的に進めていきたい。
今回わかったのは、大関の平均成績はクンロクだということ。まずクンロクは馬鹿にできないということを念頭に置いたうえで、横綱や大関の出場数によって大関に求められる成績も変化することを覚えていただけたら幸いである。