ブンデス・フットボール紀行BACK NUMBER
世代交代中でも安定のバイエルン。
コウチーニョ効果と万能キミッヒ。
text by
島崎英純Hidezumi Shimazaki
photograph byUniphoto Press
posted2019/10/26 11:00
昨季はチームを取りまとめるまで時間がかかったニコ・コバチ監督だが、コウチーニョらが加わった2年目に手ごたえを感じているようだ。
4バックは「全員CB!」の布陣。
キミッヒが中盤で起用されるようになったのはバックラインの刷新も影響しています。バイエルンは、着実に次世代の主力DFの育成に力を注いでいます。
2017-18シーズンにホッフェンハイムから加入した24歳ニクラス・ズーレは確固たるCBのレギュラーですが、ここにポリバレントな気鋭が加わりました。いずれもフランス代表でロシアW杯を制したルーカス・エルナンデスとバンジャマン・パバールのふたりです。
アトレティコ・マドリーから加入の23歳エルナンデスは5年契約を結び、シュツットガルトから加入した同じく23歳パバールは5年契約と、いずれもビッグディールです。ふたりに共通しているのはCBを本職としながらSBの素養も備えている点です。
2018-19シーズンのバイエルンはリーガ34試合32失点でリーグ2位の低失点でしたが、2017-18シーズンは同28失点(リーガ1位)、2016-17シーズンは同22失点(リーガ1位)だったことで、自慢の守備力に若干の不安が生じていました。
しかし、これも新世代のふたりが加入したことで解消した向きがあります。
第4節から第6節までの3試合で形成したバックラインは壮観の一言。右からパバール、ズーレ、ジェローム・ボアテンク、エルナンデスという布陣で、いわゆる「全員CB!」。この3試合で3失点しているので堅牢とは言えなかったのですが、それでも時を重ねれば守備力が劇的に向上する雰囲気がぷんぷん漂っていました。
端正なコバチ監督の飽くなき野心。
端正な顔立ちとスマートな容姿のコバチ監督ですが、その内面には指揮官としての飽くなき野心と強烈なプライドが備わっているように感じます。
昨季はハメス・ロドリゲスを登用せず、買取りオプションが行使されなかった彼はレアル・マドリーへレンタルバック。ベテランDFのボアテンクはベンチ要員で、マッツ・フンメルスは古巣のドルトムントへ戻りました。ロッベンとリベリーに別れを告げたのも監督の意向が反映されたでしょうし、今季は10歳のときにバイエルン下部組織に入団して20年の歳月を過ごしたミュラーからレギュラーを剥奪しました。
戦術面でも過去に固執せず、アイントラハトを率いていた時代に多用した3-4-2-1ではなく“バイエルン式4-2-3-1”を貫く姿勢が顕著。実績の乏しさを指摘されてきた点も、昨季の国内2冠で相殺しました。
コバチ監督はヤワじゃない。最近は彼の所作や佇まいに凄みすら感じます。