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ユーベがパス24本を繋いでゴール!?
懐疑論を黙らせたサッリ監督の手腕。
posted2019/10/26 09:00
text by
神尾光臣Mitsuomi Kamio
photograph by
Uniphoto Press
10月6日、サン・シーロ。インテルvs.ユベントスのイタリアダービーで、ユベントスイレブンの繰り出したプレーが話題となった。
80分、左サイドでのスローインに始まり、サイドから後方に回し、後ろでじわじわとつなぎながらインテルの選手たちを前に引き出す。
13本ほどのパス交換が経過したところで、組み立て役のミラレム・ピアニッチが縦方向にパスを入れてリズムを変える。インテルの守備組織を揺さぶったところに、前線から落ちてきたクリスティアーノ・ロナウドが右サイドへ展開。相手の守備陣がサイドを固めてきたのを見て、今度はまた中央へと繋いだ。
パスを繋ぎ、右に左に振り回し、インテルの守備陣をずるずると後ろに押し下げていく。するとそこで、プレスの掛からなくなったピアニッチが後方でボールを呼び込む。
ボスニア代表のゲームメーカーは、エリア手前のスペースに動いたC・ロナウドへ正確で速い縦パスを通した。そこから中央へ走り込むロドリゴ・ベンタンクールにパス、ベンタンクールも躊躇なく裏のスペースへパスを出した。そこには、DFのマークを外しエリア内でフリーになっていたゴンサロ・イグアインの姿が。冷静にシュートをねじ込み、試合の決勝点となるゴールを決める――。
10人すべてを経由した衝撃のゴール。
「イグアインのゴールに至った24本のパス」
パスを繋ぎ倒し、アントニオ・コンテ監督の下で強固に仕上がっていたインテルの組織守備を解体した。フィールドプレーヤー10人すべてを経由したパス交換自体も美しいものだったが、そういうプレーをユベントスというクラブがやったことが衝撃としてイタリア国内で騒がれた。
ベンチにいるのは今季から就任したマウリツィオ・サッリ監督。ナポリやチェルシーで攻撃的なサッカーを展開した人物の手腕は周知で、それ自体は驚くに当たらないことだろう。だが騒がれた理由は別にある。そんなスタイルは本来、クラブの伝統とは相入れないものであるからだ。