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英国で起きた指導者の人種差別と、
曹貴裁前監督の処分で感じたこと。 

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井川洋一

井川洋一Yoichi Igawa

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posted2019/10/29 11:00

英国で起きた指導者の人種差別と、曹貴裁前監督の処分で感じたこと。<Number Web> photograph by Getty Images

湘南ベルマーレはJ1残留を目標に戦っている。降格となれば、クラブだけでなくファンにも、その影響は計り知れない。

FAが重い処分を決めた理由とは。

 FAはベアズリーが用いた言葉は「明らかに人種差別的で、完全に受け入れられないもの」とし、2020年4月29日までフットボールに関わるすべての活動を禁じ、現在58歳の指導者にFAの教育コースを受けるよう命じた。

 本人はすべての疑いを否定しており、アンディ・コールやレス・ファーディナンドら有色人種を含めた多くの仲間たちは彼の人格や正当性を擁護し、その場にいたほかの選手は「差別的に言ったわけではないと思う」と証言している。

 FAもベアズリーという人物そのものは差別主義者ではないと認めているものの、差別的発言に対して7カ月半の活動禁止という重い処分を決めた。理由は、「軽いペナルティであれば、(社会)全体に誤ったメッセージを送ることになる」からだと説明。またこの件は、エル=ムハンニ自身が複数のチームメイトと共にクラブに申し立てをしたところから始まっている。

不透明だった、日本での事件。

 日本のパワーハラスメントと英国の人種差別──。

 どちらも近年の両国で非常にセンシティブに扱われているものだ。しかし似たケースではあるが、始まりも終わりも、透明性も異なる。

 曹前監督の件は、7月2日と10日にJFA暴力根絶相談窓口に被害を訴える通報が発端となった。そして8月12日に、一部スポーツ紙によって、この一件が明るみに出ている。チームはリーグ戦5連敗の後に、5試合で4勝と復調傾向にあった時期。不本意な形で問題が明らかになったのは、クラブにとっては極めて悔やまれるものだ。

 曹前監督は疑惑の大部分を否認し(背景やニュアンスの違いなど)、多くの教え子は彼の指導や人柄を称えたが、ペナルティを科された。ただし、それはあってないようなものだった──監督の5試合出場停止処分は自粛期間で相殺されたように。

 落着して安堵している人もいるようだが、この不思議なソフトランディングと不透明性はどうしたものか。

 社会はそこからどんなメッセージを受け取ればいいのか。

 曹前監督の罪はすでに償われたと捉えていいのか。

【次ページ】 湘南の短期的な目標とともに……。

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