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ブラジルW杯組が“消えた”ドイツで
ニャブリ、サネは新時代を築けるか。
text by
中野吉之伴Kichinosuke Nakano
photograph byGetty Images
posted2019/10/22 09:00
リオ五輪で大活躍したニャブリ(右)は、ロイス(中央)らと新時代を築けるか。
「レーブ辞めろ!」のブーイング。
ハーフタイムには「レーブ辞めろ!」というブーイングも起こっている。どこかでまだ「自分たちは世界王者なんだ」という意識を払拭できないでいる。それはファンだけではなく、ドイツメディアもそうだろう。現在地を見誤ってしまうから、現状だけを見て憂い、事態にあたふたしてしまうこともある。
ホッフェンハイムのオランダ人監督アルフレッド・スロイデルがそんなドイツの現状を次のように語っていた。
「ドイツ人はなかなか我慢できないからね(笑)。でもドイツ代表はいま不公平なまでにネガティブに語られすぎていると思うよ。例えば、ドイツは個の力が足らないと批判する人がいるけど、サネとニャブリというワールドクラスの突破力を持つ選手が2人もいる。あり方を、やり方を変えていこうとしている段階なんだろ? それには時間が必要なんだ。少し前のオランダ代表だってそうだった。いつまでも、ロッベンとファンペルシに依存し続けていたんだから」
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この指摘には説得力がある。2014年のブラジルW杯では3位と好結果を残したものの、その後世代交代へのギアを切り替えることに苦しみ、2016年欧州選手権、さらには2018年W杯でも、その本戦にオランダの姿はなかったのだ。
ビアホフが出した未来への声明。
自分たちはどこを目指すのか。新しいものを生み出すためには痛みを伴う。そのすべてを背負い込む覚悟がなければ、前を向いて歩いていくことはできない。フランクフルトに新設されるDFBアカデミーの着工式で、代表チームマネージャーのオリバー・ビアホフは次のように声明を出していた。
「勝利のあとには喜びがある。だが敗戦後に手を取り、ともにまた立ち上がることに本当の意義がある。ドイツは確かに2000年欧州選手権の敗退からリフォームを決意し、06年W杯以降すべての欧州選手権・W杯で準決勝以上に進出してきた。そして'14年にはW杯、そして'17年にはコンフェデ杯で優勝を飾った。これは素晴らしい成果だろう。 だが、'18年ロシアW杯ではグループリーグで敗退し、ここ最近は各世代別代表でわずか1つしかタイトルを勝ち取っていない。
また、ブンデスリーガでプロデビューを飾る若手選手の数は減ってきている。2017-18シーズンと2006-07シーズンを比べると、実に30%も割合が減っているのだ。2013年、バイエルンとドルトムントが決勝で激突した時以来、CL決勝に進んだドイツのチームはいない。
我々が見据えるのは過去ではない。必要なのは新しい一歩だ。新しいダイナミックな波を生み出し、世界のトップに返り咲き、長期間トップレベルにいるための力強い一歩だ」