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ブラジルW杯組が“消えた”ドイツで
ニャブリ、サネは新時代を築けるか。
text by
中野吉之伴Kichinosuke Nakano
photograph byGetty Images
posted2019/10/22 09:00
リオ五輪で大活躍したニャブリ(右)は、ロイス(中央)らと新時代を築けるか。
話題になりがちなノイアーとの関係。
ドイツ代表では、過去にもこのポジションでは激しい争いが繰り広げられてきている。カーン対レーマン、イルクナー対ケプケ、シューマッハー対マイアー。他の国なら正GKとしてプレーできるだけの才能がありながら、試合に出られるのは常に1人。そして一度レギュラーとなったら、基本的に固定されて起用されるのがGKというポジションだ。
メディアは面白がって一触即発ムードを作り出そうとする。アルゼンチン戦後に2人のGKはミックスゾーンで取材対応を行わなかったが、翌日にはノイアーが「できたら昨日の試合も僕が出たかった」とコメントし、いぜん無風状態ではない。
とはいえ、自分たちの問題でチームに迷惑をかけるつもりはどちらにもない。お互いにプロフェッショナルな振る舞いを見せている。レーブは、現時点でノイアーを来年の欧州選手権までは正GKとして確約しているものの、その後についてはまだわからない。孤高の戦士の戦いは今後も続いていく。
いずれにしても、他国からすれば贅沢な問題を抱えているのは間違いない。
若きドイツに安定感はまだない。
チームの話に戻ろう。才能の片りんを披露している若いドイツ代表だが、一方でやはり成熟度に関しては国際的なトップレベルまではきていない。
年齢的なことだけではなく、代表歴でも、クラブチームにおいても、国際舞台の経験が少ない選手が多いことも影響し、流れをつかめているときは好プレーをどんどん見せるが、一度相手にリズムを明け渡すと、途端に落ち着きを失い、安定感をなくしてしまう。
小さなミスが続き、それを取り返そうと無理をして、それより大きなミスを自分たちで誘発してしまう。クリアすべきところでパスをつなごうとして、相手に奪われる。パスがつなげる場面でクリアして、相手の流れを断ち切れない。
アルゼンチン戦の後半にはコーチングゾーンでレーブがさかんに「落ち着いて! 落ち着いて!」とジェスチャーを交えて声をかけていた。だが、落ち着こうにも選手は難しいプレーを選択してゆく。いや、選択しようとしているわけではなく、プレッシャーにより判断力が落ちることを止められないのだろう。
85分には初選出のゼルダルが中盤で軽率なボールロストをして、それをきっかけに同点ゴールを奪われた。続くエストニアとの欧州選手権予選ではCBで起用されたチャンが不用意なタックルで一発レッド。後半に3ゴールをあげて大事な勝ち点3を手にすることはできたが、前半は戦い方が整理されず、エストニアに得点機も作られた。