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ブラジルW杯組が“消えた”ドイツで
ニャブリ、サネは新時代を築けるか。
posted2019/10/22 09:00
text by
中野吉之伴Kichinosuke Nakano
photograph by
Getty Images
10月9日に行われたアルゼンチンとの親善試合はドイツサッカー界にとって歴史的な試合となった。
なぜなら、ヨアヒム・レーブ監督が選んだスターティングメンバーのなかに、ブラジルW杯優勝メンバーが1人もいなかったのだ。
メンバー構成のすべてが意図的だったわけではない。本来主軸であるトニ・クロースは負傷欠場で、キャプテンのGKマヌエル・ノイアーはバルセロナで活躍するマルク・アンドレ・テア・シュテゲンに出場機会を与えるため控えに回った。
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とはいえ、同じ週に優勝チームのキャプテンだったバスティアン・シュバインシュタイガーが現役引退を発表。5年前のW杯決勝で対戦したアルゼンチンと再び戦ったのは、なにかしら巡り合わせの不思議を感じさせる。
今年3月にトーマス・ミュラー、マッツ・フンメルス、ジェローム・ボアテンクというベテラン3人に対して「今後、代表に招集するプランはない」と宣言するなど、抜本的な世代交代を進めているヨアヒム・レーブ監督も、最近は負傷者の多さに頭を悩ませていた。
14人もの選手が負傷欠場の中で。
本来今年の代表戦ではスタメンを大きくいじらずに、来年開催される欧州選手権へ向けてチームの基盤を作り上げることが目標だったが、顔となるべきレロイ・サネのほか、左SBニコ・シュルツ、右SBティロ・ケーラー、MFレオン・ゴレツカ、CBマティアス・ギンター、CBアントニオ・ルディガーといった主軸候補が次々と負傷してしまった。
アルゼンチン戦では実に14人もの選手が負傷欠場せざるを得ず、急遽フライブルクのロビン・コッホとシャルケのズアト・ゼルダルの2人を追加招集したものの、出場可能なベンチ入りメンバーが実質3人という事態だった。
そんなスクランブル布陣のドイツだったが、若手選手にとっては自分をアピールできる絶好のチャンス。スタメン起用されて見事なゴールも決めた20歳のカイ・ハバーツは「多くの選手がこのチャンスを活かそうと、僕らも準備ができていることを示そうとして、それをプレーでしっかりと示せたと思う。ポジション争いは大事なこと」と力強く語っていたが、その言葉通り、特に前半は非常にスピーディで戦術的にもハイレベルな試合運びを見せていた。