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東京五輪のマラソン、競歩は札幌へ。
「選手を第一」の変更は歓迎すべき?
posted2019/10/19 11:40
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph by
AFLO
思いがけない“決定”だった。
10月17日、国際オリンピック委員会(IOC)のバッハ会長は、東京五輪のマラソン、競歩の札幌での実施について、IOC理事会と東京五輪組織委員会の間で合意に達したことを明らかにした。
その前日、IOCが札幌に移すプランを考えていることが報道され、大会や陸上関係者の間で衝撃が走っていた。それから1日で、実質、決まったことになる。
大会の開催まで1年を切っての会場変更は、きわめて異例のことだ。
東京都の小池百合子知事が「青天の霹靂」と表現したように東京都側は報道に驚きを隠していなかった。しかし組織委員会(会長・森喜朗)はそれよりも早い段階で、IOCとコミュニケーションを図っていたという。10月8日に観戦チケットの2次抽選販売のスケジュール延期を発表したのも、その影響だ。
いずれにせよ、異例の変更であることに変わりはないが、ポイントとなったのは、選手を第一に考えるという姿勢だ。
過酷を極めた世界陸上のマラソン。
背景には、先日行なわれた、陸上の世界選手権がある。
ドーハで開催されたこの大会は、過去にないほどの高温多湿の環境で実施された。
そのため、マラソンは23時59分、競歩は23時30分スタートとなった。
それでも過酷を極めた。
例えば、女子マラソンは気温32度、湿度は70%強の状態で始まり、出場68名のうち、棄権28名で完走率は60%を切った。世界選手権で最も低いパーセンテージとなった。
気温31度、湿度はやはり70%台の男子50km競歩も完歩率は約61%。優勝した鈴木雄介が給水時に止まって飲む姿も、レースの厳しさを明瞭に伝えた。
試合の後、鈴木や20km競歩で優勝した山西利和は内臓にダメージがあると語った。それもまた、過酷さを物語っていた。