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東京五輪のマラソン、競歩は札幌へ。
「選手を第一」の変更は歓迎すべき? 

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松原孝臣

松原孝臣Takaomi Matsubara

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posted2019/10/19 11:40

東京五輪のマラソン、競歩は札幌へ。「選手を第一」の変更は歓迎すべき?<Number Web> photograph by AFLO

組織委員会の森喜朗会長は「われわれがダメだと言えますか?」と札幌移転案を追認する姿勢を見せた。

準備、強化は水泡に帰す。

 そして、東京五輪での今回の変更である。

 かねてから、東京の猛暑は、大きな課題とされてきた。東京都に住む人であれば、夏場の気温や湿度の高さは十分実感を持っていると思う。

 だから、7~8月の開催を疑問視する声は根強くあった。1964年の東京五輪も、気候を考えて10月になった経緯がある。今日であれば、なおさら秋に行なう意味は大きいだろう。

 ただ、「商業五輪」化し、巨額な金が動く現在は、アメリカの放送権料の都合を考慮し、夏場の開催から時期をずらせないことになっている。だから根本を言えば、IOCそのものが、選手第一の姿勢にはないことは指摘できる。今回の変更を受けて、「偽善」と言う声が上がっているのも耳にするが、それも一理はある。

 加えて、ここまで東京での開催を前提に準備してきた現場の関係者、わけても強化を図ってきた選手や周囲のスタッフの努力は、いったん、水泡に帰す結果となる。札幌が北海道マラソンで一定の蓄積を持つにせよ、宿泊施設、移動などレースの運営面についても課題が多々あるのは否めない。

以前から上がっていた札幌開催案。

 それでも、札幌に変更する案のほうがより理があると考えざるを得ない。

 札幌も近年は暑い日はある。とはいえ、割合を考えれば、東京より気温が低い日が多く、湿度の低さもメリットといえる。

「東京五輪」とはいえ、実際は広域で競技は行なわれる。自転車は静岡県、野球・ソフトボールは福島県、サッカーは東京都のほか埼玉県、茨城県、神奈川県、宮城県、北海道……といった具合だ。事情に応じて、もともと都外に会場を広げている。

 他でもない選手たちから東京での競技開催については懸念が出ていた。例えば先述の競歩・鈴木は、日陰のないコース設定に対し「できるなら、コース変更を」と訴えていた。表立ってではないが、馬術競技では気温について不安視する声が上がっており、トライアスロンやマラソンスイミングでは気温だけでなく水温の高さや水質についても同様の意見が聞こえてきていた。

 そもそも、陸上関係者などから「マラソンなどは北海道がいいんじゃないか」という意見も以前の段階で出ていた。

【次ページ】 IOCに言われる前に……。

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