野球のぼせもんBACK NUMBER
虚無感が漂ったホークスの勝因は、
工藤監督の苦しい決断と37歳CS男。
posted2019/10/09 08:00
text by
田尻耕太郎Kotaro Tajiri
photograph by
Kyodo News
ホークスが球団初の3年連続日本一へ、まずは最初の関門を突破した。
楽天イーグルスとの超短期決戦のCSファーストステージ。初戦を落とし、データ上は圧倒的に不利だった。
パ・リーグのCSファーストステージの過去12年間で初戦黒星の球団が“逆転突破”を果たしたのはわすか1例しかなかったのだ。つまり突破確率は“8%”しかなかった。その高い壁を今年のホークスは乗り越えたのだ。
CS開幕前は正直、疑っていた。もう18年間も“番記者”をしておきながら、ホークスの底力を信じきれなかった自分を恥じなければならない。CS開幕前の数日間の練習を取材した雰囲気からは敗退の2文字を覚悟していた。
大事な戦いに向かって行く緊張感が伝わってこなかったのだ。それでいて、いつも通りともまた違っていた。
リーグ制覇の価値を知っているからこそ。
虚無感。それに近かったのではなかろうか。レギュラーシーズンの最終盤までリーグ優勝のために全力を注いだ。だが、それは叶わなかった。体も心も疲弊していたのは当然だ。
「いや、せめて日本一にはなるんだ」。その気迫は、昨年はひしひしと伝わってきた。そうやって昨年はCSでライオンズを見事にうっちゃった。そして日本一の大目標を達成してみせた。
頂点に辿り着いて覚えた違和感が、チームには少なからずあった。「嬉しいんだけど、何か心に引っ掛かるんです」。そんな本音をいくつも聞いた。日本一達成時はともかく、CS突破でのビールかけを遠慮したいという声も上がっていた。
ホークスの選手たちは何度もリーグ制覇を経験している。だから、その価値や尊さをどのチームよりも知っている。今季もCS突破の際にビールかけを行うか否か、球団内では議論があったそうだ(昨年同様実施の方向)。
一方でイーグルスの練習を見たら、大きな声がグラウンド内を飛び交っていて非常に活気があったのだ。これはマズイなというのが素直な感想だった。