野球のぼせもんBACK NUMBER
虚無感が漂ったホークスの勝因は、
工藤監督の苦しい決断と37歳CS男。
text by
田尻耕太郎Kotaro Tajiri
photograph byKyodo News
posted2019/10/09 08:00
CSファイナルステージ進出を決め、殊勲の内川と笑顔でハイタッチをする工藤監督
短期決戦を得意とする内川の存在。
また、選手でキーマンになりそうなのが内川聖一だ。ファーストステージ第3戦で同点タイムリーと決勝ホームランを放った。3試合で打率.364、2本塁打、4打点と打線を引っ張っている。
とにかく短期決戦に強い。CS通算で38試合に出場して51安打、10本塁打、打率.375をマークしている。
「自分では理由が分からない。シーズンで2割5分しか打っていないのにね」
今季は大きな故障がなく、3年ぶりに規定打席に到達した。しかしシーズン打率は.256と、稀代の安打製造機に似つかわしくない数字に終わっていた。
打つか打たないかなら「5割」。
「打てない理由は分かった方が良いけど、打てる理由は分からないままの方が良い時もある。分かってしまうと、そこに違う余計な意識を持ってしまうから」
独特の言い回しだ。ただ、短期決戦の強さの極意は、内川の「割り切る心」にあるのかもしれない。
「それはあるかも。自分の中での勝手なプラス思考ですけどね。レギュラーシーズンだとそれまでの成績や前回対戦のイメージが入って来るので、流れがあるんです。目の前の1打席だけの勝負になりづらい。
でも、短期決戦はその1打席でベストな結果を出せるか出せないかという、シンプルなところで考えられる。10回のうち3回ヒットを打てばすごいと言われるけど、1打席に限定すると打つか打たないか、その2つに1つでしょ。つまり5割なんですよ(笑)。ならば、打てる方の5割を信じてやっちゃった方がいいのかなと、シンプルに考えられるところはあります」
昨年、ライオンズを破ったCSファイナルステージでも打率.455、1本塁打、3打点をマークした。内川のバットには要注目だ。
また、昨年同様に悔しい思いをしている松田宣がこのまま終わるはずがないとも思っている。内川とともに強いホークスの象徴として長くチームを支えてきた。熱男の意地を、信じたい。