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ラグビーが“見えすぎちゃって”困る。
映像技術は危険さを強調しすぎる?
posted2019/10/04 11:40
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph by
Getty Images
ウェールズ29、オーストラリア25。
準々決勝の組み合わせに大きな意味を持つプールDの大一番は、ウェールズに軍配が上がった。
この結果を受け、敗れたオーストラリアは準々決勝でイングランドとの対戦する可能性が強くなった。
エディー・ジョーンズのイングランドである。
オーストラリア代表ワラビーズのヘッドコーチ、マイケル・チェイカは極めて興味深い人物である。
1967年生まれの52歳。レバノンからの移民を祖先に持ち、英語、アラビア語、フランス語、イタリア語を操るコスモポリタンで、“Live Fashion”というファッションブランドを立ち上げて成功を収めた、掛け値なしのミリオネアである。
というわけで、チェイカにとってコーチングは生計を立てる手段ではなく「情熱を注ぐべき対象」であり、失うものがない。
スーパーラグビー優勝を引っさげて。
実績も抜群だ。北半球と南半球のクラブ単位の選手権を両方獲得した唯一の指導者でもある。
2009年に北半球のクラブ王座決定戦、ハイネケンカップをアイルランドのレンスターで制し、2014年にはスーパーラグビーのワラターズを優勝に導いたことで、その実績がワラビーズのヘッドコーチ就任につながった。
そして前回のW杯では決勝にまで駒を進め、ワールドラグビーの「コーチ・オブ・ジ・イヤー」を獲得。
ところが、その後昨季までワラビーズは鳴かず飛ばず。お目付け役がつけられたりと、なにかと周辺が騒がしかったが、泰然自若としているところがチェイカらしい。
W杯イヤーに入るとチームは変身、8月10日にはオールブラックスを47-26と圧倒し、チェイカは「4年に1度」しっかりとチームを仕上げられることを証明した。