“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
J2新潟を沸かせる期待のルーキー。
本間至恩に初めて届いた「歓声」。
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph byJ.LEAGUE
posted2019/09/30 19:00
水戸戦で勝利に貢献した新潟MF本間至恩。下部組織出身選手として、サポーターからの期待も大きい。
意識する「ボールを置く位置」。
「縦に仕掛けることや、クロスも考えましたが、2人とも飛び込んできてくれたので、その瞬間に自分の間合いになって、僕が有利に立ったので中へのドリブルを選択しました」
右足でボールをまたいだ時、福満はクロスと縦への仕掛けを予測して、両足を揃えた状態で飛び込んできた。本間はそれを見て、ペナルティーエリア内に侵入するプレーを選んだのだった。
「僕はまずたくさんの選択肢が持てる場所にボールを置くことを常に意識しています。その中で常に『前に行くぞ』という意思のあるファーストタッチを心がけているので、あのシーンはそれがしっかりと結果につながったと思います」
岸田と福満に対して、複数の選択肢を作り出したことで相手の逆を突けた。だからこそ、あのPKが生まれたのだった。
いつも「惜しい」で終わっていた。
印象的だったのは、主審がPKスポットを指した瞬間、本間は倒れた状態で両手を広げて雄叫びを上げていたことだ。喜びを全身で表現したのには理由があった。
「チャンスを作っていても、今季はいつも『惜しい』で終わっていた。どうしても目に見えるもの(結果)が欲しかったんです」
本間の言葉を借りれば、“目に見える結果”は第26節の徳島ヴォルティス戦で挙げた1点のみ。アシストはゼロ。観客を沸かせるプレーは増えてきたが、結果を出しているとは言えなかった。
試合後のミックスゾーンでのやり取りで、彼の心理を垣間見ることができた。
大勢の記者に囲まれた中で、ある記者に「左のエリアで本間選手が(ボールを)持つとスタジアムが沸きますね」という質問を受けた時だった。
「自分ではあまり分かりません。プレーしているときはスタジアムの音はあまり聞こえてこないです。(スタジアムが沸くと)言ってもらえますが、本当にそうなのか分かりません」