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新体操日本代表が欧州勢破り金メダル。
“恋”の指導やルール変更も追い風に。
text by
長谷部良太Ryota Hasebe
photograph byRyota Hasebe
posted2019/09/26 20:00
団体総合決勝でボールの演技を終え、歓声に応える日本メンバー。東京五輪前年に大きな結果を残した。
2017年の銅メダルで成長を確信。
日本は2012年ロンドン五輪で見事決勝に進み、7位入賞。ただ、当時のキャプテンだった田中琴乃さんは、「日本がどれだけいい演技をしても、メダルは難しいと感じていました。(ロシアなどの強豪は)50メートル走で言うと、相手が20メートルも先にいるようなイメージ」。日本は再び世界と同じ舞台で争えるまでに成長したが、まだ表彰台を現実的な目標にはできなかった。
2016年リオデジャネイロ五輪では決勝のリボンで最後の大技がうまく決まらず、前回から1つ順位を下げて8位。大舞台で力を出し切るのに必要な安定感が足りていなかった。
新体操の選手は10代後半から20代前半が主流である。日本チームも代替わりを経ながら、着実に底上げを進めていった。その成長を確信させる好成績が生まれたのが、2017年世界選手権ペーザロ大会の団体総合銅メダルだった。
この種目で日本が表彰台に乗ったのは2位に入った1975年マドリード大会だけだが、当時は強豪のソ連などが不在だった。ペーザロ大会こそ、事実上初めて日本がトップに食い込んだ瞬間と言えた。
追い風になったルール変更。
そして、今回のメダルラッシュにたどり着く。
日本の追い風になっているのが、2018年からのルール変更である。
新体操は技の難しさを表すDスコアと、正確性や出来栄えなどを評価するEスコアの合計点で争う。昨年以降、それまで10点満点だったDスコアの上限がなくなり、得点は青天井になった。
今回、日本は団体総合のボールで3位、フープ・クラブはトップの得点をマーク。内訳を見ると、Dスコアはボールがロシアに次ぐ2位、フープ・クラブは1位。伝統的な器用さを武器に、日本は背面から手具を投げたり、片手でキャッチしたりするなどし、世界トップレベルのDスコアをそろえていた。
高難度の技は失敗のリスクが高まるが、日頃の練習からしっかりミスへの対応を意識。現キャプテンの杉本早裕吏や鈴木歩佳ら、素早く的確な判断力を兼ね備えたメンバーがいるのも大きい。
本番で誰かがミスを犯しかけても他のメンバーがうまく補い、演技全体の乱れを最小限に抑えることができるようになっていた。今回はメダル常連国のベラルーシやイタリアにミスが相次いだ点も忘れてはならないが、それも日本の勝負強さを際立たせた。
団体の強さの秘訣を問われると、山崎強化本部長は陸上のリレーに例えて説明した。
「団体は(ミスしかけても)他の人がカバーできる。だから日本のリレーも速いと思うし、団結力が出せる。みんながいることで自信も持てると思うし、そういう強さじゃないかなと思います」