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マンチーニの積極的な若手起用が吉。
変貌したイタリアは美しくて、強い。 

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神尾光臣

神尾光臣Mitsuomi Kamio

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photograph byUniphoto Press

posted2019/09/21 20:00

マンチーニの積極的な若手起用が吉。変貌したイタリアは美しくて、強い。<Number Web> photograph by Uniphoto Press

EURO予選で好調のイタリア代表。インテルで定位置をつかむセンシ(左)やバレッラなど、将来有望な若手が揃う。

代表デビュー組は驚異の18人。

 その秘訣は、若い世代の選手の発見と起用を根気よくやったことだ。

 フル代表はおろか、セリエAにも出場経験のなかった当時19歳のニコロ・ザニオーロを招集したかと思えば、「セリエAのクラブは若手選手の起用にもっと勇気を持つべきだ」と半ば挑発気味に提言を発する。さらには試合がなくても代表合宿の場を設け、選手を自分の手元に呼び寄せて観察することを徹底した。

 その結果、マンチーニが就任から1年少々の間に代表デビューさせた選手は18名だ。UEFAネーションズリーグの開催で親善試合の数は以前よりも少なくなったことを考えると、驚異的な数字である。抜擢された選手のなかにはAマッチデビューを果たすだけではなく、代表の主力として定着する者も現れた。

インテル移籍のバレッラ、小兵センシ。

 筆頭はニコロ・バレッラ。カリアリの下部組織出身で、年代別代表の常連となっていた彼は、2018年10月の親善試合ウクライナ戦でデビューするや主力の一角に完全定着した。ジェンナーロ・ガットゥーゾの全盛期を彷彿とさせる激しいプレスと、ゴールにも絡める攻撃センスの高さを両立した選手だ。代表の活躍でめきめきと評価を上げ、今年の夏にはインテルへステップアップを果たした。

 もう1人は、ステーファノ・センシ。リミニやチェゼーナの下部組織で育った小兵MFは、サッカー関係者の間では「ピルロの後継者になれるかもしれない」との評価を得ていた。2016年、若手の育成に定評のあるサッスオーロで出場機会を伸ばし、ゲームメイクだけでなくフィニッシュにも絡む多彩な選手へと成長した。マンチーニ監督はすぐ代表に呼び、今やベッラッティやバレッラと肩を並べるほどの存在感を発揮している。

 マンチーニ体制以前にフル代表デビューを果たしていたロレンツォ・ペッレグリーニ、フェデリコ・キエーザといった選手たちも、すっかり大事な戦力となっている。これらの若手は、各クラブでも当然主力として活躍している。若手選手が所属クラブでも代表でも主力として定着するのは、近年にはなかったことだ。

 プランデッリ監督が「クラブがイタリア人選手を使わないから、我々が育てている」と愚痴をこぼしていたことが思い出されるが、ようやく流れが変わったということだろう。

【次ページ】 アリゴ・サッキが蒔いた種。

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ロベルト・マンチーニ
ニコロ・バレッラ
ステーファノ・センシ

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