プレミアリーグの時間BACK NUMBER
ランパード・チェルシーを包む、
第1期モウリーニョと同じ高揚感。
posted2019/09/22 09:00
text by
山中忍Shinobu Yamanaka
photograph by
Uniphoto Press
9月17日のチャンピオンズリーグ(CL)、チェルシー対バレンシア(0-1)戦の終了後、スタンフォード・ブリッジで一緒に観戦していた知人は、「ファン、温かいんですね」と筆者に言った。
指導者の資格も持つ彼はサッカーに造詣が深いが、イングランドでの試合観戦は初体験。サッカーの母国の観衆が、不甲斐ないプレーや結果に対しては不満を示す、感情剥き出しの光景を想像していたに違いない。チェルシー・サポーターに感心したというよりも、驚いたようだった。
中立的な視点の持ち主にすれば、もっともな感想だろう。
プレミアリーグの強豪に数えあげられるビッグクラブが、CLでのホームゲームで零封負け。バレンシアは、直前の監督交代劇に選手たちが憤慨し、混乱の真っ只中と言われていた。
フルタイム3分前、ビデオ判定が味方した同点のチャンスも、ロス・バークリーがPKをバーに当ててふいにした。結果、アヤックス、リールと同居するグループHで3位と出遅れ。それでも試合終了時のスタンフォード・ブリッジは、ホーム観衆によるブーイングなどは聞かれなかったのだ。
結果は伴わなくても包む高揚感。
しかしながら、それが今季からフランク・ランパードが指揮を執るチェルシーの新たな現実にほかならない。キャリア2年目の指揮官がレジェンドであるばかりか、就任から約3カ月の新監督が合格点を与えられる采配を見せていることから、試合結果にかかわらず前向きな高揚感がスタンフォード・ブリッジを包んでいる。
チームは一見、エデン・アザールがレアル・マドリーに去ったことでワールドクラスのスターが不在となったように見える。しかし、キックオフ直前のスタンドでは昨季までのアザールを讃える巨大な横断幕に代わり、「フランク・ランパードの青白軍団」との横断幕が頭越しにリレーするようになった。
ファンはランパード監督のチェルシーに、単なる「我がクラブ」を超えた愛情と誇りを覚え始めている。その度合いは、黄金時代の到来を告げた2004年からの第1期ジョゼ・モウリーニョ時代以来とも言える。