欧州サッカーPRESSBACK NUMBER
マンチーニの積極的な若手起用が吉。
変貌したイタリアは美しくて、強い。
text by
神尾光臣Mitsuomi Kamio
photograph byUniphoto Press
posted2019/09/21 20:00
EURO予選で好調のイタリア代表。インテルで定位置をつかむセンシ(左)やバレッラなど、将来有望な若手が揃う。
「カテナチオ」はもういない。
現在のイタリア代表の特徴は、ハイプレスとポゼッションを重視した攻撃的なチームであることだ。欧州予選では、どの相手に対しても60%近くのボールポゼッションを誇り、700本近いパスをつないだ試合もあった。
イタリア代表と言えば、あえて相手にボールを渡してゴール前を固める「カテナチオ」のスタイルがファンの間にこびりついている。しかし、そんな姿は微塵も残っていない。DFラインは高い位置を保ち、ボールを支配して常に相手陣内でプレーしようという姿勢が板についているのだ。
一方で、守備を疎かにしているわけではない。前方から激しくプレスをかけて、相手のパスコースを限定。中盤でボールを絡め取ったら、ハイテンポでパスを回していく流れがしっかり形になっている。4-2-3-1のシステムを好んで用いてきた今までの代表とは違い、マンチーニ監督が主に使うのは4-3-3。しかもセンターフォワードには本来は攻撃的MFのベルナルデスキを用いてボールキープ率を高めようとするなど、これまでの方法論とは違う取り組みを見せている。
サッリが率いたナポリのような。
彷彿とさせるのは、マウリツィオ・サッリ監督(現ユベントス)が率いていたナポリの姿だ。中盤の底、レジスタとして攻撃の起点となるのは、ナポリ時代も中核となっていたジョルジーニョだ。そこに、パリ・サンジェルマンで優秀なパサーとして定評を確立したマルコ・ベッラッティが絡み、非常に高いボールポゼッションを演出している。
それによって、相手にボールを渡さずチャンスを作りまくるサッカーに成功している。シュート数の割にゴール数が少ないとの指摘もあるが、チャンスに点を決めて勝てている。予選6試合でわずかに3失点、相手にチャンスを与えずに試合をコントロールできている様子は、数字も雄弁に物語る。
攻撃的なサッカーへの切り替えはこれまでの前任者も、いやイタリアサッカー協会(FIGC)も試みてはいた。しかし、一度頓挫している。
2010年から4年間代表を率いたチェーザレ・プランデッリ監督は「クアリタ(質)」を標語に掲げ、スペインをベンチマークとするポゼッションサッカーの構築を図った。その次のアントニオ・コンテ監督も、速攻主体のプレスサッカーを展開しながらも選手たちのメンタリティを変えようとしていた。
もっとも、そうした潮流は長く続かず、2016年からチームを指揮したジャンピエロ・ベントゥーラ監督は、攻撃も守備も中途半端なチームを作り、ロシアW杯出場を逃してしまった。
マンチーニは頓挫したプロジェクトを再び興し、形にできている。