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ブンデス1部に初昇格のウニオン。
「鉄の連帯」と「無償の愛」の魅力。
text by
島崎英純Hidezumi Shimazaki
photograph byGetty Images
posted2019/09/14 11:00
「鉄の連帯」を見せるウニオンのサポーターたち。
旧東ドイツの社会主義独裁政権に抵抗する反体制派
ウニオン(Union)の(良い意味での)特異性は多岐に渡ります。
ウニオンの母体は1906年に発足しましたが、第二次大戦後に東ドイツ政府によってクラブ再編が行われ、現在のクラブは1966年に発足したとされています。元々ウニオンは労働者階級の方々を中心にクラブが結成された経緯があり、旧東ドイツの社会主義独裁政権に抵抗する反体制派の心の拠り所として成り立っていました。
クラブは何万人もの会員(現在は3万人以上とも言われています)が捻出する月10ユーロの会費を下支えにし、彼ら会員の総意のもとで会長などのクラブ経営者が選出されて今に至っています。
「無償の愛」の伝説。
これ自体はバルセロナなどの「ソシオ制度」と相通じる部分もあって特に珍しくもないのですが、旧東ドイツの当時の国家状況などから何度も経営難に陥ったクラブに対してウニオンのサポーターが示した無償の愛は、幾多の伝説として語り継がれています。
例えば、ドイツでは献血に報酬制度が設けられていたため、サポーターが自発的に献血を行って、その報酬をクラブへ寄付したりもしました。まさに「血の結束」。また、スタジアム改修費用が枯渇して工事が頓挫した際は約2300人のサポーターが無償で建設作業に従事して、約350万ユーロの費用削減に貢献したりもしました。
「金がなきゃ、自前で賄えばいい」。なんてシンプルな思考なのでしょう。素晴らしい。
「我々がクラブを支える」。これがウニオン・サポーターのスローガン。なので、彼らはその対極に位置する(と思われる)RBライプツィヒのことを心底嫌っています。ライプツィヒは先述したように2009年に発足したのですが、当時5部のSSVマルクランシュタットのライセンスをオーストリアの飲料メーカーであるレッドブルが買収して生まれたクラブです。