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ブンデス1部に初昇格のウニオン。
「鉄の連帯」と「無償の愛」の魅力。
text by
島崎英純Hidezumi Shimazaki
photograph byGetty Images
posted2019/09/14 11:00
「鉄の連帯」を見せるウニオンのサポーターたち。
亡き夫のポスターを受け取った奥様が涙した。
1部での開幕戦に先立ち、ファンクラブなどのサポーター有志がある企画を立ち上げました。それはウニオンのサポーターでありながら、すでに故人となった家族、友人、元選手、クラブスタッフなどの写真を13ユーロでアップロードして、それを70センチ四方のポスターに印刷して当日のスタンドで掲げるというもの。スタンドでは亡き夫のポスターを受け取った奥様が涙し、7歳のときに初めて「アルテン・フェルステライ」に連れて行ってくれた父親の生前の姿を掲げた中年男性が誇らしげにチャントを奏でていました。
そう、総観客数よりも多かった450人は、愛するクラブがトップカテゴリーで闘うことを夢見た故人の数をカウントしていたから、なのです。
試合前はサポーターのコールやチャントだけが鳴り響く。
ドイツ・ブンデスリーガでは試合前にサポーターを対象にした各種イベントやプレゼント抽選会が行われたりしますが、ウニオンのゲームではそれが一切ありません。観衆を鼓舞するような音楽もほとんど流れず、試合前はサポーターのコールやチャントだけが鳴り響きます。
「鉄のウニオン」を意味する「Eisern Union(アイザン・ウニオン)」のコールを大サポーターが奏でると、スタジアムのボルテージが最高潮に達します。クラブの広報部長にして名物スタジアムDJでもあるクリスティアン・アルバイト氏がピッチへ姿を現すと、それは選手紹介の合図。でも他のスタジアムではお決まりの紹介音楽も鳴らず、アルバイト氏の野太く迫力のある選手コールだけが響きます。
ドイツ・ブンデスリーガでは選手紹介時や得点時にアナウンサーが選手の名前をコールするとサポーターが苗字で返す風習があります。長谷部誠ならば、「マコト!」「ハセベ!」といった感じですね。でもウニオンでは違います。