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ブンデス1部に初昇格のウニオン。
「鉄の連帯」と「無償の愛」の魅力。
posted2019/09/14 11:00
text by
島崎英純Hidezumi Shimazaki
photograph by
Getty Images
ベルリンはドイツの首都。これは大抵の日本人の方が認知していると思うのですが、この街をなんだか遠くに感じる方が多いとも思います。それは日本の成田や羽田、関空からはフランクフルトやミュンヘンへ飛ぶ直行便があるのに、ベルリンへの直行便が就航していないこととも関係しているのではないでしょうか。
かく言う僕も、初めてベルリンを訪れるまでは、この地への見識が深くありませんでした。
1989年にベルリンの壁が崩壊したことはニュースで見て知っていましたが、これはイギリス、アメリカ、フランスの信託統治地であった西ベルリンと、ソビエト連邦(現・ロシア)が統治していた東ベルリンとの境界にあった壁だったことなどつゆ知らず、「西ドイツと東ドイツの境界が取り払われたのかぁ」と勝手に解釈していた始末。後にベルリンはあくまでも東ドイツ領内にあったことを教えられて汗顔の至りと、まったくの無知をさらけ出していたものでした。
オルタナティブな存在として認識。
さて、ここからが本題です。旧東ドイツ地域のクラブであるウニオン・ベルリン(以下、ウニオン)がクラブ史上初めて1部に昇格し、今季2019-2020シーズンのブンデスリーガで戦うことになりました。
旧東ドイツ地域のチームが1部でプレーするのは2009年に降格したエネルギー・コットブス以来のことになります。ちなみに2013-2014シーズンから1部に所属するヘルタ・ベルリンは旧西ベルリンに属する地域で発足されたクラブ。またRBライプツィヒの本拠地であるライプツィヒは旧東ドイツ地域ですが、こちらはドイツ統一後の2009年に創設された新興クラブのため、この括りには入りません。
ウニオンはドイツサッカー界からオルタナティブな存在として認識されてきました。オルタナティブ(alternative)とは英語で「二者択一」という意味ですが、現在では「既存・主流のものに代わる何か」として捉えられていて、昨今は音楽やアート、そしてスポーツの世界でも用いられることの多い言葉です。