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新生ドイツは頂点に返り咲けるか?
オランダに敗戦、ロイスは前向き。
text by
中野吉之伴Kichinosuke Nakano
photograph byGetty Images
posted2019/09/10 08:00
ロシアW杯ではショッキングなグループステージ敗退に終わったドイツ。来年のEUROまでに王者の威厳を取り戻せるか。
地道な努力と積極的な世代交代。
このままでいいわけがない。
自分たちの足元をあらゆる角度から見直す契機として、ドイツサッカー協会は様々な状況を分析し、代表チームのあり方もしっかりとまた見直そうとした。
昨年は大型スタジアムではなく、ヴォルフスブルクやマインツといった3万人規模のスタジアムで代表戦を開催した。一回り小さいスタジアムで、訪れてくれたファンとともに満員の雰囲気を大切にしようとしている。また公開練習を設け、ファンと触れ合える機会を大事にするようにスケジュールを調整。やれることから丁寧に取り組んでいく。何でも、あたり前に手に入るわけではないのだ。
そうした地道な努力に、積極的な世代交代を敢行し、その成果が少しずつ出ている高揚感が加わっている。
ここまでのユーロ予選は3戦3勝。同組最大のライバルであるオランダにはアウェーで勝利し、エストニアにはホームで8-0と快勝していた。このホームでのオランダ戦に勝利すれば、本戦出場チケットはほぼ確実なものとなるはず、だった。
ハンブルクのフォルクスパルクスタディオンには公式発表5万1299人のファンが詰めかけた。ここ最近で一番の大入りで、スタジアムにはチームとサポーターが一丸となって戦うという雰囲気が漂っていた。
“絶対的なサッカー”からの変化。
変わったのはそうした外側だけではない。代表チームが志向するサッカーにも変化が見られている。
ロシアW杯前のドイツは“絶対的なサッカー”を目指していた。それは前回王者としての誇りであり、ただ同時に驕りでもあった。
連覇を狙う王者として、相手に一切の抵抗も許さずに完璧にゲームをコントロールして自力で圧勝する。分析のフォーカスは相手チームではなく、あくまでも自チームに向けられた。
だが、サッカーは相手があって成立するスポーツだ。相手は対策を立てて臨んでくる。地力で優位な立ち位置にはいたかもしれない。しかし実際にそこまでの決定的アドバンテージがあったわけではないという事実に、目をつぶっていた。