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新生ドイツは頂点に返り咲けるか?
オランダに敗戦、ロイスは前向き。
posted2019/09/10 08:00
text by
中野吉之伴Kichinosuke Nakano
photograph by
Getty Images
隣に座っていたオランダ人記者は前半の間、ずっとイライラしていた。
9月6日に行なわれた欧州選手権予選ドイツ対オランダ戦のことだ。
オランダはボールをキープしているものの、なかなかゴールチャンスが作れない。9分、一瞬の隙をつかれてカウンターからドイツに先制を許すと、その後は相手守備のミスから1つ、2つ好機が生まれたものの、GKノイアーの好セーブに防がれてしまう。
35分には空中戦でドイツのMFキミッヒとオランダのDFデリフトが交錯すると、そこから両チームの選手がヒートアップし、一触即発の雰囲気に。この状況に隣のオランダ人記者も立ち上がり、猛然と抗議していた。しかし後半、一気にオランダが4ゴールを挙げて逆転勝ちを収めると、今度は立ち上がって大きなガッツポーズを何度も繰り返していた。
ドイツ対オランダは、ただの一戦ではないのだ。
ドイツは観客動員に苦しんでいる。
ここ最近の戦績が芳しくなかったことで、どこか燻っていた感もあったが、過去あまたの因縁を抱え、多くのビッグトーナメントで雌雄を決してきたサッカー大国同士の対決である。
昨年にもUEFAネーションズリーグでも対戦したが、新設された大会の価値が浸透していなかった。またドイツではロシアW杯での惨敗劇からの再出発にフォーカスされていたために、正直そこまでの“バチバチ感”は感じられなかった。
だが、この日は違った。スタジアムには確かな熱のうごめきがあったのだ。
実はここ数年、ドイツは代表での観客動員を取り戻すのに苦労していた。
スタジアムが埋まらない。
ブラジルW杯優勝後、ファン離れが顕著になってしまった。その原因はいくつかある。W杯優勝でファンの緊張感やワクワク感が薄れ出したのもあるし、チケットの高騰化や代表チームの公開練習がほとんど行なわれないことで、ファンがほったらかされた感じが漂ったことも問題だった。
勝っていれば、そのうちまたファンも足を運ぶようになる。そんな緩い願いもなくはなかったのだろうが、前回優勝国として臨んだロシアW杯でグループリーグ敗退し、ドイツサッカーは完全にがれきの下敷きになってしまった。