プロ野球亭日乗BACK NUMBER
原辰徳インタビュー(3)「監督の気持ちでやる選手を何人作れるか」
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byHideki Sugiyama
posted2019/09/11 11:30
監督として、7度のセ・リーグ優勝、3度の日本一にチームを導いた。昨年、野球殿堂入りを果たす。
「今年の慎之助は僕を観察しているのを感じる」
──基本的に代打に専任させることを伝えたわけですね。
「それからですよ、良くなったのは。それまでは自分から『キャッチャーをやります』と言い出したわけだから、キャッチャーをやらなければいけない、という気持ちが凄い重みになっていたんだと思う。3月の初め、10日くらいにその話をして、それでうんと楽になったんじゃないかな。そうするとこっち(バットを握る仕草)も上がってくるわけですよ」
――代打の出番が来るまでは、自分が監督のつもりで試合を見ていなさいと伝えたという話も耳にしていますが?
「そこまでは言っていないけどね。でも『そういう意識で選手たちを見て、指導してあげてな』ということはありましたね。伝えました。だいたい彼は年齢的には真ん中から、僕ら側のこっち側にいるでしょ」
――いずれは指導者になるべき選手。そのために修行させているとも見えますね。
「私の中では、今年の慎之助は僕を観察しているというのを感じますね。どういう戦力を、どういう用兵を、どういう戦術を、というのを観察しているなというのは、以前に比べると感じるね」
足を引っ張る人間は教育か排除を。
――それは阿部が将来、指導者になるときに必ず役立つ?
「彼がどういう風な心境で自分の周りの風景を見るかですよ。風景というのは変わらないけど、心境というのは変わってくる。僕が1回目の監督、2回目の監督、それで3回目とやってね、野球のユニフォームであったり、東京ドームであったり、他のチームであったり、そういう目に見えてくる風景というのは3回とも変わらないですよ。しかしその時の心境というのは変わっていくものなんです。そうすれば見えてくる風景は同じだけれど、必ず見えるものは変わってくるはずなんです。だからそれでいいと思います。
慎之助もそういう中で、今までの野球観とは違った風景、感覚が出てきているということではないでしょうかね。今までとはまた違った心境でね」
――最後にチームの話をもう少し。この4年、勝てなかったチームを勝たせる難しさはどこにありましたか?
「大事なことは絶対に勝つんだ、ということをみんなが思うことでしょうね。思わせないとダメ。思わないような人間が、もし仮に1人いるなら、それは我々の目的に対して相当なるエネルギーで足を引っ張る人間ですよ。そういう人間は教育、あるいは排除という形になるでしょう。そこは譲れないところです」