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原辰徳インタビュー(3)「監督の気持ちでやる選手を何人作れるか」
posted2019/09/11 11:30
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph by
Hideki Sugiyama
ペナントレースは残り1カ月を切り、5年ぶりの覇権奪回をかけた巨人の戦いは、いよいよラストスパートに入る。
原辰徳監督へのロングインタビュー最終回は、その最後の戦いのキーマンとなる阿部慎之助捕手への思いと、最強の“リーダー論”を聞いた。
――7月から8月にかけて17試合を3勝14敗と大きく負け越した時期がありました。7月31日から6連敗して、8月7日の中日戦ではベテランの阿部慎之助捕手を5番に起用しています。その試合を勝って再び、チーム状態はプラスに転じていくわけですが、やはりチームがピンチに陥ったときに阿部選手の存在感というのが際立っているように思います。
「力がまだあるということでしょう。背中で引っ張る力、今のレギュラークラスとは少し年齢も空いている世代じゃないですか。もちろん彼が音頭をとってミーティングをしたり、たまに選手を集めたりもしています。しかし彼の一番の力は試合に出て、そして結果を残すことなんです。結果を残さないとこれはダメなんだけど、僕としても残せる形で試合に出させることが、チームに対する1番の喝でしょうね。本人もまだ動けるしね」
「背負っていた荷物をとってあげた」
――当初は「もう一塁では使わない」と言っていましたが、シーズンでは結果的には一塁で起用しています。その辺の経緯は?
「結果を出させる形で彼を試合に起用するとなると、キャッチャーでというのは厳しいね。まずケガをさせるわけにはいかないから。実は僕はもっと力がなくなっていると思っていたの、正直なところ。でも今年になって必死に練習もしているし、どこか僕が帰ってきたことで眠っていた細胞も、運動神経も起きたのかもしれないね。それで『お前、ファーストでは使わないよ。キャッチャーでしか使わないよ』と言ったら、これが本人にはプレッシャーだったと思う。だからキャッチャーの練習をもの凄く一生懸命にしていた。
でも春先に何度もケガをした。そこで僕も悩んでシーズン前になって『慎之助、ちょっと来い!』って呼んで、『オレがあんな風に言ったけど、お前の力は、ジャイアンツにまだ必要だとよく判った。キャッチャーというポジションは確かに、いまは守れないかもしれない。でも守れなくていい。1打席でいいから、ピンチヒッターでも大きな戦力になると思っている』と伝えたんですね。それで僕は彼が背負っていた荷物をとってあげた」