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親会社をかえるという鹿島の大勝負。
メルカリから来た新社長が語った事。
text by
寺野典子Noriko Terano
photograph byNoriko Terano
posted2019/09/04 11:50
鹿島アントラーズの社長に就任した、メルカリの小泉文明社長。「鹿島アントラーズに足せるものがある」という。
メルカリが鹿島に足せるのはテクノロジー。
今回の新取締役に名を連ねたメルカリ陣は小泉社長のみだ。常勤の取締役の顔ぶれでの新任は小泉社長だけで、大きな変化はない。
メルカリは現場には5名ほどの出向を予定しているというが、この人事からも今回の親会社変更が、通常のものとは違うことが伝わってくる。小泉社長も語る。
「アントラーズ自体は、会社として機能している。今回は再生案件ではなく、このままでも十分Jリーグを代表するクラブの経営を、私たちがサポートするという立場。出向する社員だけでなく全メルカリとして、メルカリメンバー、社員全体でいろんな側面から支援していきたいと考えています」
そのためにメルカリに何ができるのか? まず、小泉社長の言葉を借りれば、キーワードとなるのが「テクノロジー」だろう。
「アントラーズと我々との企業文化の違いというのは、それほど感じてはいません。アントラーズは非常に革新的で新しいことにチャレンジしているクラブ、会社だと感じています。しかしペーパーワークが多いだとか、表現するまでに時間がかかるというふうには思うので、そういうところを変化させていきたい。次のアントラーズにするためにチャンレジしたいという社員がすぐにチャレンジできるような、そんな仕組みへと変えていきたい。
アントラーズには、『伝統と革新』という文化があります。いいところを守りつつ、Jリーグを代表し、アジアや世界へ出ていくことになれば、もっと変化を自らが起こしていく必要があるかなと思っています。そのためにテクノロジーを活用し、意思決定のスピード感をもって、経営を回していく。
そういうことがすべてのフェーズに入ってくれば、サポーターも喜ぶ、スタジアムもよくなる、強化もよくなり、すべてがよくなっていく。現在もスタッフはやりたいことがたくさんあるはず。そのスピードをあげる。そして、失敗も許容できるような文化にしていきたいと思っています」
住金時代とは変わった立場。
テクノロジーの発展によって、日本の企業、働き方にも変化が生まれようとしている。小泉社長は、テクノロジーを主体とする企業を立ち上げてきた人物でもある。
大和証券SMBC(現大和証券)から、ミクシィを経て、2013年メルカリへ入社。2014年取締役、2017年取締役社長兼COOに就任している。フリマアプリとして躍進するメルカリを見れば、そのスピード感は納得できるだろう。
かたや鹿島アントラーズは、クラブの母体であった住友金属が2012年新日鉄と経営統合したことで大きな変化の波に飲み込まれようとしていた。「地元の方々や働く人たちの誇りだ」と長く愛情を注いでくれた住金時代とその愛の質は変わった。
400近く存在する子会社のひとつでしかないことを痛感する出来事に遭遇する。