ファイターズ広報、記す。BACK NUMBER
ある会食で渡された一枚の戦闘服。
日本ハムの頂点には栗山監督がいる。
posted2019/09/03 12:50
text by
高山通史Michifumi Takayama
photograph by
Kyodo News
『闇は光の母』――。
日本が誇る巨匠、詩人の谷川俊太郎さんの詩のタイトルである。
読み解くと大意が、奥深い。
広報の立場ではあるが8月、北海道日本ハムファイターズの低迷を至近距離で体感した。平常時はそれほど、1つの詩では響かなかったかもしれない。ただ今は、胸に刺さった。
北海道日本ハムファイターズの現状と照らし合わせると、心が吸い寄せられるような詩が刻まれている。
今、その闇の真ん中で仁王立ちし、闘っているのが栗山英樹監督である。チームでは唯一無二の存在で頂点に君臨し、すべての矢面に立っている。それが監督になる。
ほかにも確固たるエース格の有原航平選手、中継ぎ陣の絶対的な大黒柱の宮西尚生選手、不動の4番の中田翔選手など各人、オンリーワンの責任を担っている。だが監督は、特別である。
1年間、143試合を司る。責任を持ってゲームをマネジメントする。攻守の場面すべてで、最前線で指揮を執る。ベンチから一瞬でも姿を消すことも、目を背けることも、逃げることもできないのである。
一時、ベンチ裏へと消えて気を静めたり、1試合だけ欠場して気を緩めたりすることも一切できない。それは各コーチも同じだが、その重圧には歴然の差があると思う。
ファンからの飛んだ激しい声。
同一カード3連敗を喫した8月30日からの東北楽天ゴールデンイーグルスとの3連戦。敵地での戦いだった。仙台市内のチーム宿舎を出発前、多くのファンの方々から見送りをされた。ほかの遠征地でも、よく目にする恒例のシーンである。
ただ今回は、少し異質な場面があった。2戦目の出発前だった。栗山監督が姿を現すと、1人の男性から声が飛んだ。激しく、活字にすることが憚られるフレーズだった。きっと熱烈なファンの方である。
現状を憂い、それを直接、伝えたかったのだろう。その気持ちは分からなくはない。ただファイターズの一員である私も含め、ほかのスタッフもその言葉を耳にしていた。一瞬、誰もそのことについて語ろうとはしなかった。思いはきっと同じである。胸が痛かった。
ファイターズの皆が、全幅の信頼を置き、身を預けている絶対的なリーダーが、栗山監督なのである。
今は闇である。そこから光を生むと信じて、全員が身を捧げている。光へと導く使者は、1人しかいない。栗山監督だ。