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休場明け即大関復帰は至難の業だが。
貴景勝の決断に期待を抱きたい理由。 

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西尾克洋

西尾克洋Katsuhiro Nishio

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photograph byKyodo News

posted2019/09/04 07:00

休場明け即大関復帰は至難の業だが。貴景勝の決断に期待を抱きたい理由。<Number Web> photograph by Kyodo News

稽古総見で精力的な姿を見せた貴景勝。大関陥落も休場したことによって、復調を果たせるか。

休場して状態を取り戻す決断。

 加えて、貴景勝の相撲に対する研究が進んでいる。

 貴景勝はここまで壁らしい壁を経験せずに大関まで昇進してきた。しかし九州場所での優勝を足がかりに大関を掴み取ってはいるものの、1月場所は11勝、大阪場所は10勝だった。

 対戦成績4勝7敗の御嶽海、3勝7敗の豪栄道、3勝6敗の高安、1勝4敗の白鵬という明確な苦手力士もいるうえに、優勝した九州場所以降も彼らに苦しめられている。逸ノ城が大活躍した次の場所で、多くの上位陣にやり返されたところからも分かるように、上位力士は対策が早いのだ。

 ただ、悲観的な要素だけではない。

 貴景勝が大関在位のまま地位を死守するのではなく、1場所休場して状態を取り戻す決断をした。このことは大きい。

 ここ10年、番付を駆け上がってきた力士たちは、上位で長く相撲を取り続ける体とスタイルができていない状態で昇進し、厳しい対戦の中でけがを負った。それでも地位を保つために強行出場を続けるという苦しい状態が続いている。

 妙義龍や照ノ富士、遠藤、琴勇輝、千代鳳、常幸龍、宇良といった、上位でも通用する潜在能力を見せた力士の多くが、このパターンで苦しんでいる。貴景勝のライバルである阿武咲も、同じ理由で幕内中位から下位に留まっている。

期待を抱かせる稽古総見の内容。

 だが、貴景勝は一度休むという選択をした。

 期待半分、不安半分ではあったのだが、8月31日に両国国技館で開催された稽古総見の内容は期待を抱かせるには十分なものだった。

 碧山の攻めを受けて、耐えながら突き押しに転じる姿は力強かった。膝の負傷を抱えて強行出場している力士は、攻めを受けるリスクを避けて自ら攻める相撲を取るものだ。しかし貴景勝が碧山クラスの攻めに対応できるならば、コンディションが上がっている可能性が高い。

 ただ一方でスタミナを戻すには時間がかかっているのか、白鵬との稽古では息が上がっていた。貴景勝の取り口は長期戦になりづらく、致命的になるわけではないとはいえ、まだ万全ではないようだ。

【次ページ】 貴景勝の相撲を取り戻すことが大事。

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