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休場明け即大関復帰は至難の業だが。
貴景勝の決断に期待を抱きたい理由。
posted2019/09/04 07:00
text by
西尾克洋Katsuhiro Nishio
photograph by
Kyodo News
貴景勝が、大関復帰をかけて9月場所に臨む。
5月場所の御嶽海戦で普段見せない四つの形から右膝を負傷し、一度は再出場するも休場を余儀なくされた。加療5週間だった重傷の影響は大きく、名古屋場所も全休。大関復帰には復帰場所で10勝というハードルを受け入れての決断だ。
世の関心は、貴景勝が9月場所で大関復帰できるか? ということだ。連続休場の影響や現在のコンディション、上位力士との力関係などを総合的に考慮して10勝以上の成績を残す可能性がどの程度あるか? ということになるが、現在の貴景勝の状況を考えるとかなり厳しいと言わざるを得ない。
まず、この9月場所は貴景勝にとって初めての長期休場明けだということである。
およそ4カ月、本場所の真剣勝負から離れた中で、実戦感覚を取り戻すのは容易なことではない。
引退した稀勢の里が大けがを負った後でも長期休場に踏み切れなかったのも、それが理由の1つと言える。
ましてやこれが初めての経験となると、復帰場所の難易度はさらに上がる。稽古場の相撲と本場所の取組は全く異なり、ブランクがある力士が相手であれば、様々な手段をチラつかせるのはよくあることだ。たとえば立合いの駆け引きや変化、張り差しやカチ上げのような取り口にも対応する必要がある。
今場所の10勝のハードルは高い。
また9月場所は、横綱・大関のコンディションが名古屋場所より上がってくることも想定される。
豪栄道と栃ノ心はカド番で、是が非でも勝ち越しが欲しい場所。勝てる相手には勝っておきたいと考えるのは自然なことだろう。そして横綱だと鶴竜、そして白鵬も休場明けの5月場所を経て、さらに状態が上がることが予想される。
他の三役には大関を目指す御嶽海、伸び盛りの阿炎、実力者の遠藤がいる。そして平幕を見れば北勝富士や逸ノ城、大栄翔も控えている。上位が充実していることを考えると、豪栄道と栃ノ心にしてみれば、元大関とはいえ貴景勝も星勘定の中に入れるのは間違いない。
貴景勝は上位が苦しむ中で大関獲りのチャンスを生かした経緯があるが、当時の10勝よりも今場所の10勝の方が、ハードルは明らかに高い。