「谷間の世代」と呼ばれて。BACK NUMBER
ファンタジスタ松井大輔が明かす
南アW杯、駒野&阿部との涙と絆。
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浅田真樹Masaki Asada
photograph byYuki Suenaga
posted2019/09/02 17:00

38歳ながら横浜FCで欠かせない戦力の松井大輔。谷間の世代のファンタジスタは渋みを増し続けている。
駒野のPK失敗に松井、阿部も涙。
この大会のハイライトとして、そして、谷間の世代のハイライトとして、とりわけ印象的なシーンがある。
パラグアイとの決勝トーナメント1回戦。120分間スコアレスの激闘を繰り広げ、PK戦の末に日本が敗れた直後のことだ。
日本の3人目のキッカーを務めたのは、駒野友一。だが、駒野の右足から放たれたシュートは、無情にもクロスバーを叩いた。僅差の勝負を分けたのは、両チームを通じて唯一となるこのPK失敗だった。
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敗戦の責任をひとりで背負い込み、泣き崩れる駒野。そこへ近寄り、小刻みに震える背番号3を両脇で支えていたのが、松井と阿部勇樹だった。
そのとき、1981年生まれの同級生3人が並んでいたのは、もちろん、たまたま近くにいたから、ではない。
「駒野とは、小6の関西選抜のときからの付き合いだし。阿部ちゃんにしても、関西選抜と関東選抜がすごく仲がよかったので、小6から知っている。その後も、アンダー(年代別日本代表)でずっと仲がよかったメンバーでした。だから、あそこで僕ら3人が揃った。そういうメンバーが隣にいて寄り添っていたっていうのも、あのチームの強みだったのかな、とは思いますね」
ライバルが横にいてくれる。
南アフリカでの激闘から、すでに9年以上が経過した。
「ワールドカップの後は燃え尽き症候群みたいになってしまい、ボーッとしちゃって、その時期はちょっともったいなかった」
松井はそう言って苦笑する。飽くなき成長を求める姿勢は、20年前から変わっていないが、ふと周りを見渡すと、スパイクを脱ぐ同世代の仲間が多くなった。
「さみしいですけどね。でも、まだ続けている選手がいるので、それは自分のモチベーションになるし、支えにもなる。いい意味でのライバルが横にいてくれるっていうのが、今はうれしいです。自分もあと何年できるか分からないけど、できるだけ長くプレーしたいとは思っています」