マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
甲子園の「現場」が本当に最適か。
スカウトが本当に見たい能力とは。
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph byKyodo News
posted2019/08/19 11:15
甲子園はスカウトにとっては仕事場でもある。そのやり方に合理化の余地はまだあるだろう。
たとえばこんなスカウト方法も。
フッと情景が思い浮かぶ。
どこかのオフィスの会議室だろうか。
よく見知った黒光りした顔がいくつも並んで、大型テレビの画面に流れるのは、今まさに甲子園球場で行われている高校野球の実況映像だ。
画面の近くで見る者、わざと離れて見ている者、見る位置を刻々変えて見る者……それぞれのスカウトが、それぞれの感想を述べながら観戦している。
1人の感想に、別の1人の反証がからんで議論が始まる。
リアルタイムでゲームが進行していくから、議論が派生していって、話が飛ぶことはあるが、議論は活発化していく。
場合によっては、その場で「結論」が出たりする。
オフィスだったら、同じ建物に球団幹部が在席していることもあろう。同席願って、その場でリアルなプレーを見てもらい、その結論が「承認」されたりする。
選手獲得という「最重要事項」に関わるすべての者が同時に正確な映像を共有して、生きた議論のうえで納得ずくの結論に行き着く。
汗も炎暑もない快適な空間で、実のある結論が出る。悪いこと、何もなさそうに思うが。
スカウティングのスタイルも変わっていい。
スカウトたちの「働き方改革」。
夏の甲子園大会、第101回。高校野球の「新しい100年」が始まった記念の年だ。
高校野球を取り巻くさまざまなものも、新しい方法に目を向けてもよい時期になっているのかもしれない。