スポーツ・インテリジェンス原論BACK NUMBER
アメリカ名門大学での陸上と勉強。
岡田健が体感した部活の日米差。
posted2019/08/21 18:00
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph by
Hideki Sugiyama
今年の陸上日本選手権には、変化の兆しがあった。
アメリカの息吹である。
サニブラウンはFLORIDAというロゴが入ったユニフォームで登場した。在籍するフロリダ大学ゲーターズのものである(ちなみに、アメリカのスポーツ飲料で圧倒的なシェアを誇るゲータレードは、フロリダ大学のフットボールのために開発された飲料だ)。
そしてもうひとり、アメリカの大学のユニフォームで出場した選手がいた。
3000m障害に出場した岡田健(おかだ・たけし)は、今年、カリフォルニア大学バークレー校を卒業したばかりである。
岡田の競技人生をたどると、日本とアメリカの部活の差異が際立っていて興味深い。
中3進級時に起きた大きな変化。
岡田が本格的に陸上に取り組み始めたのは中学2年生からだ。
「中学で陸上部に入部してみると、活気がなくて……。真面目にやりたいという気持ちもあったので、それなりには走っていたとは思います」
中1の時の1500mの自己ベストは4分52秒。県レベルであれば十分に速い部類だが、スーパーなタイムというわけではない。
転機となったのは、中2で陸上に熱心な先生が赴任してきてからだ。
「いきなり、『お前は3000mで全中に出られる』と言われて、この先生、なに言ってんのかな? と思いました(笑)。でも、自分に可能性があるのだったら、真面目に取り組む価値があると思いました」
顧問の先生は駅伝が大好きで、平日は朝練習をはじめとして距離走を重視し、週末ともなれば、選手たちをどんどん記録会に出す。岡田も順調に成長を見せていたが、中3に進級する時、環境に変化が起きる。
「在籍していた中学校の生徒数が膨れ上がりすぎて、新設の中学に移ることになったんです。まいりましたね。先生の指導が受けられなくなり、競技力も伸ばせないと思い込んでいました」