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子どもを“追い込まない”環境を!
ドイツサッカー界で進む育成改革。
 

text by

中野吉之伴

中野吉之伴Kichinosuke Nakano

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photograph byUniphoto Press

posted2019/08/18 11:50

子どもを“追い込まない”環境を!ドイツサッカー界で進む育成改革。<Number Web> photograph by Uniphoto Press

ドイツは2018年ロシアワールドカップでグループリーグ敗退し、育成改革をさらに加速させている。

ドイツはサッカー協会登録人数世界一の国。

 ドイツはサッカー協会登録人数世界一の国だ。2019年現在約713万人。日本サッカー協会登録人数が2018年のデータで89万人なので、約8倍。数字上特にすごいと思われるのが成人男性でサッカーをしているのが420万人もいるという点だ。成人サッカーリーグはブンデスリーガを1部に下は11部までつながっている。大人になっても自分のレベルと生活状況に応じてサッカーを続けられる環境があるわけだ。

 タレント育成の試みも様々に行われている。成長段階に応じた試合形式を導入し、U-9までは5人制、U-10とU-11が7人制、U-12とU-13が9人制と、子どもたちがレベルに応じてサッカーを楽しめるような環境がある。ブンデスリーガは基準をクリアした育成アカデミーを保持しなければならないし、全国366カ所に拠点が置かれたトレセンシステムも兼任ではなく、必ず専任の指導者を登用して、地域内におけるおかしな権力争いが起きないようにケアをしている。

 指導者育成では、協会のやり方を真似るのではなく、トレーニング理論や戦術という専門知識をどのように身につけ、コミニュケーション能力を高めていくことが望ましいかを突き詰めてもらえるようにアプローチする。そうした様々なプロジェクトが成果となり、結果となったのが、2014年ブラジルワールドカップでの優勝だった。

惨敗劇を真摯に受け止める。

 あれから5年の時が経った。ドイツの現在位置は世界一ではない。2018年ロシアワールドカップでグループリーグ敗退という惨敗劇を真摯に受け止め、気持ちを新たに育成と向き合おうとしている。向き合うためには現場の今を知ることが大切だ。そしてどんな選手を求めているのか、どんなサッカーを目指そうとしているかの指針とかみ合わせなければならない。

 DFBタレント育成チーム主任マルクス・ヒルテは警鐘を鳴らしていた。

「DFB登録選手のうち50%以上が4~12歳の子どもだ。だがそこからU-13、U-15と上の学年に上がっていくにつれて、どんどん辞めていく子どもが増えていく。これを自然の減少とだけとらえてはいけない。U-13までの子どもたちの指導をしているコーチのうち実に90%以上がライセンス講習会などで指導者育成を受けていない人たちだ。ここへのアプローチをいつでも考えなければならない」

【次ページ】 勝つことにしばられた指導者や両親。

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