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千葉雅也が考える身体と精神のいま。
「効率よく金を稼ぐ体」から離れて。 

text by

八木葱

八木葱Negi Yagi

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photograph byKiichi Matsumoto

posted2019/08/15 08:00

千葉雅也が考える身体と精神のいま。「効率よく金を稼ぐ体」から離れて。<Number Web> photograph by Kiichi Matsumoto

身の回りで起きた小さなことの話が、抽象的な論理につながっていく。千葉雅也氏の思考はとんでもなくスリリングだ。

スポーツの「勝ち負け」と「遊び」。

――そう考えると、スポーツほど人為的な、無駄なものもそうないですよね。

千葉 スポーツには勝ち負けがありますが、でもそれは遊びですからね。それを言うと、経済的な競争も遊びの一種と言えなくもないか……。僕は勝ち負けにあまり興味がないんですが、こう考えてくると本当は勝ち負けを遊びとしてもっと楽しんでもいいのかもしれないですね。

 勝ち負けを楽しむか、勝ち負けに抵抗するか。それがネオリベとどう関係してくるのか。この問題は今後さらに考えたいと思います」

 1時間半のインタビューの中で最も印象的だったのは、千葉氏が「知っていることを話す」のではなく、「その場で考えて話し」ているように見えたことだ。

 15分前の自分の発言と矛盾する結論にたどり着きそうでも、自分の論理思考が導く答えに寄り添って突き当りまで走ってみる、とでも言うのだろうか。

『アメリカ紀行』の中でも度々発揮されていたそのアドリブ性について、本人はTwitterを例にこんな風に語っている。

「それは僕の思考というか仕事のスタイルそのものですね。僕は Twitterのヘビーユーザーで、1日中携帯を見ています。たとえば蕎麦屋さんで聞こえた隣の会話から思いついたことをツイートしてるうちに政治論になったり、みたいなことがよくある。そうやって物事に自分がどう反応したかというログを保存しておくことで、それがエッセイになったり論文になったりするんです。もちろん後から精査はしますが、目の前に現れるものにその場でその場で反応して瞬発的に考えるのが僕のスタイル。哲学的な話も、ファッションも政治問題も、スタイルは全部同じです」

 千葉氏のTwitterでは、日常の出来事にトリガーされて彼の思考が走り出す瞬間をかなりの頻度で目撃することができる。

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ベストセラー『勉強の哲学』の直後、
サバティカル(学外研究)で訪れたアメリカの地で、
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32のvariationsで奏でるアメリカ、新しい散文の形。

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