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拍子抜けする程ジャパンは強かった。
トンガに快勝、花園スタッフの本気。 

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生島淳

生島淳Jun Ikushima

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posted2019/08/05 15:45

拍子抜けする程ジャパンは強かった。トンガに快勝、花園スタッフの本気。<Number Web> photograph by AFLO

トンガに快勝をおさめたジャパン。世界の壁は厚いが、ポジティブな機運が日本に広がりつつある。

運営も完全にW杯のリハーサルモード。

 トンガ戦で印象的だったのは、試合会場の運営がW杯のリハーサルに入っていたことだ。関係者の言葉を借りれば、「今回は本気モードです」。

 試合終了後の流れも、W杯のフォーマットと一緒。試合が終わってから30分後に敗者側の会見が始まり、45分後に勝者側のヘッドコーチとキャプテンがマイクの前に座る。そして60分後からミックスゾーンを選手が通り始める。狭い場所で、座りながらパソコンで原稿を送る新聞記者のみなさんの姿が、微笑ましかった。

花園のスタッフがしてくれた素晴らしい対応。

 今回、とても素晴らしかったのはスタジアム・スタッフの対応だった。

 報道席に座っていると、ひとつ問題があった。

 試合中、出入り口のコンコース付近のスピーカーがひっきりなしに、「チケットの確認をしています」というアナウンスが、前半の間は途切れることなく繰り返されていた。ハッキリ言って、ストレスフルだった。

 要は、トイレや売店を利用する際は、チケットを持って席を離れてくださいという注意なのだが、これがプレースキックの間もずっと流れ続けていた。

 試合前、ハーフタイムに流れるのは分かる。しかし、試合中は必要ないと感じた。そこで会場のボランティアスタッフに、

「あなたにこのスピーカーを止める権限はないのは重々承知しているけれど、これは観戦の妨げになると思う。せめて試合中はスピーカーを止めて欲しいので、会場のマネージャーと話がしたい」

と私はリクエストした。

 戸惑っていたようだったが、ハーフタイムが終了し、後半が始まると、なんとスピーカーの音声がピタリとやんだ。

 私の声が届いたのかは定かではないが、極めて柔軟に対応し、判断した責任者がいたのだろう。

 前例主義に陥りがちで、その場の判断スピードが遅い日本のスタジアムの運営で、花園のスタッフは素晴らしい対応をしてくれた。

 ホスト国としての準備も整ってきたことを実感した。

【次ページ】 「日本は変わってきてると思ってるはず」

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