F1ピットストップBACK NUMBER
次戦も表彰台に期待かかるホンダ!
ドイツGP快挙の裏側の白熱ドラマ。
text by
尾張正博Masahiro Owari
photograph byGetty Images
posted2019/08/01 11:15
ホンダスタッフらと3位を喜びあうクビアト(手前右)。前日にはお子さんが誕生したばかりとあって嬉しさも倍増だったろう。
エンジニアとドライバーの意思疎通に問題が。
ホンダにとってトロロッソという存在が単にPU供給先というだけでなく、一緒にレースを戦うパートナーであることは、ドイツGPのレース前にトロロッソに贈った田辺のこんなアドバイスからもわかる。
「ここ数戦、ピットインのタイミングが遅すぎるなど、エンジニアとドライバーのコミュニケーションがうまく図れていなかったようなケースも見受けられました。そこでドライバーからのフィードバックをもう少し重要視してはどうかということを提案しました。
レース前の全体ミーティングでもそのへんが改善されていて、レースでもしっかり対応できていたと思います」
「OK、なんとかやってみる! レッツ・ゴー!!」
田辺が「レースでもしっかり対応できていた」と指摘したシーンは、レース後半のタイヤ交換のタイミングだった。
ニコ・ヒュルケンベルグ(ルノー)がクラッシュしてセーフティーカーが導入されたとき、クビアトは9番手を走行していた。路面はウエット。ほとんどのドライバーがインターミディエイト(雨用と晴れ用の中間)タイヤを装着していた。セーフティーカー先導によるスロー走行がしばらく続いていたとき、雨が止み始める。そのとき、ピットからクビアトへ無線が飛んだ。
「もし、このまま雨が止んでドライになると、セーフティーカー走行中のいまピットインすれば、大きくポジションアップが狙える。路面の状況はどうだ?」
レースエンジニアからの無線にクビアトは答えた。
「OK、なんとかやってみる。タイヤ交換の準備をしておいてくれ。レッツ・ゴー!!」
クビアトがピットインして、ドライタイヤに履き替えたのを見て、翌周から慌ててライバルたちも続々とピットインするが、そのときにはすでにセーフティーカーランは解除されていたため、クビアトのポジションは3番手まで一気に上がっていた。