マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
佐々木朗希は「秋」に伸びる。
彼の器に、甲子園なんて小さい話だ。
posted2019/07/30 11:30
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph by
Asami Enomoto
準決勝の一関工業戦に佐々木朗希投手が先発したと聞いて、えっ! と思った。
延長12回で194球を投げ抜いた盛岡四高との4回戦から中2日。
佐々木朗希が投げるのは、中3日になる「決勝戦」だろう……勝手にそう決めつけていた。
相手校との力関係を考えても、準決勝の一関工業戦は、大和田健人投手、和田吟太投手で十分試合になるだろうと考えていた。春の練習試合で、2人の力量は確かめていた。
「大エース」がいるから目立たないが、130キロ台の速球に3球で打者を追い込めるコントロールと、高校生としては立派な投球のできる2人だった。
ならば準決勝は、投げるとしてもここ一番のリリーフ登板。「正念場」は、おそらく花巻東が出てくる決勝戦と踏んでいたのだが。
自分が大船渡の監督だったら……。
大船渡高の監督さんにしてみれば、これまでの人生で最も難しい選択だったのではなかったろうか。
もし、自分が大船渡高の監督だったら、どうしたろうか? と考えてみた。
主観的に見れば、親御さんからおあずかりしている野球部員の1人であろうが、これほどの今まで見たこともないような“大器”であれば、客観的には、日本の球界、いや世界の野球界からの「あずかりもの」と考えたって、大きく外れてはいないだろう。
あくまでも野球部員の1人と見なし、チームの前進のためには少々の「無理」は覚悟してもらうのか。世界球界の「至宝」と考え、数年先の大輪開花を優先させて、登板プランを立てるのか。
こりゃあ、難しい。
本人に訊けば、「投げたい! 投げます!」と言うに決まっている。
こうなったら、責任を負うのは「大人」しかいないのだ。
そのかわり、本人と話がしたい。いや、本人だけじゃ足りないだろう。ベンチ入りする投手たちも交えて……いや、それでも足りない。ベンチ入り20人全員か、もっと言えば、すべての野球部員を交えた議論でもまったくおかしくないはずだ。