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「最高峰のラグビー」のための決断。
決勝の地、日産スタジアムの芝管理。 

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戸塚啓

戸塚啓Kei Totsuka

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photograph byYuki Suenaga

posted2019/07/21 11:50

「最高峰のラグビー」のための決断。決勝の地、日産スタジアムの芝管理。<Number Web> photograph by Yuki Suenaga

ラグビーW杯決勝の舞台となる日産スタジアムでピッチ管理に携わる青木淳氏(左)と福岡正敏氏。葛藤と戦いながら、大会成功へ向けて全力を尽くす。

ハイブリット芝に賞賛の声も。

 日産スタジアムはサッカーJ1リーグの横浜F・マリノスの本拠地である。Jリーグの規約では「人工芝が5パーセント以下である」ことがピッチの条件とされており、日産スタジアムのハイブリッド芝は人工芝が3パーセントに設定されている。限りなく天然芝に近い、と言っていい。ハイブリッド化で強度は増すものの、芝生に傷ひとつつかない、ということはないのである。

 ハイブリッド芝がラグビーにどれだけ耐えうるかのテストケースとして、昨年10月末に国際試合が開催された。ニュージーランド対オーストラリアの『ブレディスローカップ』である。

 両チームの選手からは、芝生への賞賛の声が聞かれた。「私たちが求めている速い展開のラグビーが可能だった」といった評価に胸を撫でおろしつつも、福岡らはW杯への課題も得る。芝生が深くえぐり取られるようなことがなかった一方で、表面が削り取られるような傷が散在したのだった。

頭を悩ます蓄積されたデータの少なさ。

 メンテナンスについて問われると、福岡の表情に真剣な光が差す。「簡単ではありません。大変ですね」と、苦い笑みを浮かべる。

「ハイブリッド化に伴って、芝種をティフトン419というものからセレブレーションというものへ変えたのですが、新しい芝種の性格を我々がまだつかみ切れていません。また、人工芝の入っている基布が表面から深さ4、5センチのところにあるのですが、これを切ってしまうとハイブリッド芝の強度が出ない。基布をいかに傷つけないで芝生の管理をするかは課題です」

 セレブレーションを使ったハイブリッド芝は、耐久性と耐寒性に優れ、擦り切れ抵抗性に優れた性質を持つ。成長が早い、日陰でも成長する、温度が低くても成長する、という品種でもある。かつての天然芝より品質が高くなるのは間違いないが、貼り替えからまだ1年強である。蓄積されたデータが圧倒的に少ないことが、福岡らスタッフに壁として立ちはだかる。

【次ページ】 種蒔きのタイミングも模索中。

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