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控えGKに闘魂注入されて100ゴール。
小林悠と新井章太、川崎愛の儀式。
text by
いしかわごうGo Ishikawa
photograph byJ.LEAGUE
posted2019/07/17 11:30
安定した決定力を発揮するストライカー小林悠。そして新井章太(右から2人目)も川崎に不可欠な存在だ。
4月になるまで無得点が続いた。
順調に得点を積み重ねたように思える小林だが、今年の序盤はいつになく苦しんでいた。
開幕した2月、そして3月も公式戦ではノーゴール。2014年から4年連続で開幕戦ゴールを決めるほどファーストゴールが早いストライカーが、4月になってもゴールネットを揺らせない状態が続いていたのである。
いくつかの理由はあったが、1つはポジションの影響だろう。
鬼木体制になった2017年からはワントップとして君臨していたが、今季を迎えるにあたって、チームは元ブラジル代表ストライカーのレアンドロ・ダミアンを獲得。それに伴い、鬼木達監督は小林を右サイドハーフのファーストチョイスにしたのだ。
真ん中でプレーしたいとの要望。
右サイドハーフは、小林自身も得意とするポジションではある。
例えば2016年には、そこを主戦場として得点を量産。サイドでの駆け引きに加え、そこから中央に侵入していくダイナミックな動き出しを武器に、夏場にはリーグ戦7試合連続ゴールを記録した。
指揮官も右サイドで計算できる小林がいるからこそ、レアンドロ・ダミアンと共存できると考えていたのだろう。
ただダミアンは、ポストワークを得意とし、前線で張って得点を狙うタイプである。加入して間もない時期に前線の攻撃陣に流動性は生まれにくく、さらに不動の右サイドバックだったエウシーニョが移籍したことで縦関係の連係も構築している最中だった。その時点で、右サイドでの小林は持ち味が発揮しにくい状況になっていた。
リーグ戦では開幕から出場7試合で無得点。そこであるとき、小林は真ん中でプレーしたい旨を鬼木監督に伝えた。
選手との対話を大切にする指揮官は、小林の胸の内に理解を示し、練習から小林をFWでプレーさせてストライカーの感覚を取り戻させるようにしている。小林自身も「鬼さん(鬼木監督)の考えもわかりましたし、それでスッキリとしましたね」と感謝の言葉を述べていた。