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鈴木優磨、鹿島での17年間と別れ。
手本の金崎夢生を「必ず超えます」。
posted2019/07/17 18:00
text by
寺野典子Noriko Terano
photograph by
Getty Images
前半に2失点し、無得点のまま敗色が濃厚だった。そんな中で、74分にピッチへ送り込まれたのが、ユースから加入したばかりの鈴木優磨だった。
彼がアディショナルタイムで決めたゴールだけでは勝ち点を得るには至らないし、首位陥落という結果も変わらない。それでも若武者のゴールは、チームに光明をもたらした。
2015年9月12日、ガンバ大阪戦。鹿島アントラーズはホームで1-2と敗戦したが、試合後には多くの記者が鈴木の周りに集まった。
「岡崎慎司さんが目標です」
クラブOBやチームメイトの選手ではなく、プレミアリーグ、レスターへ移籍したばかりの岡崎の名を口にした。まっすぐで純粋な想いが詰まった言葉や、動じない姿が強く記憶に刻まれている。
そんな鈴木が、2019年7月15日、ベルギーのシント=トロイデンVVへの移籍を発表。翌日に思いのたけを語った。
「複数のクラブからお話を頂いた中で、自分にとって最適なクラブだと決めました」
23歳の夏、鹿島から出ることは決意していた。それが自分にとっての「ラストチャンス」だという危機感があったからだ。
実は1年前にもシント=トロイデンVVからオファーがあったが、そのときは残留した。
「まだレギュラーで試合に出始めたばかりで、鹿島でやるべきことがあると思ったし、タイミングじゃないなと考えていた」
昨シーズン、ACLを制覇した鹿島にあって鈴木はエースと呼べる存在となった。しかしリーグ戦終了と同時に、怪我で離脱。年末のクラブW杯にも出場できず、今季は出場試合のないまま、移籍することになった。
23歳にして「ラストチャンス」。
23歳の年齢で「ラストチャンス」と話す鈴木に対して、違和感を抱く人もいるかもしれない。しかし彼が描くキャリアのビジョンを聞くと、その決断の意味がわかる。
「ヨーロッパへ行くのに、若ければ若いほうがいい。過去の例から考えても23歳というのがラストチャンスだと考えている。海外へ行くだけが目標ではなくて、最終的にはチャンピオンズリーグの舞台に立ちたいし、プレミアリーグでプレーできるようになりたい。
とはいえ、僕は目の前のできることを少しずつやりながら、上へ行きたいタイプ。それに、移籍した最初のクラブで試合に出られないとその後が難しくなる。日本へ戻ってくるというケースが多いという印象がありますしね。
本田圭佑選手のように、オランダ2部からでも試合に出て活躍すればステップアップできる。だからこそ、最初のクラブで土台を作ることが重要だと考えていた。(金崎)夢生くんも同じことを話してくれたので、シント=トロイデンVVがベストだと思った」