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控えGKに闘魂注入されて100ゴール。
小林悠と新井章太、川崎愛の儀式。
text by
いしかわごうGo Ishikawa
photograph byJ.LEAGUE
posted2019/07/17 11:30
安定した決定力を発揮するストライカー小林悠。そして新井章太(右から2人目)も川崎に不可欠な存在だ。
鼓舞してくれる新井への感謝。
新井に「闘魂注入」をお願いしているのは、小林なりの理由もあるという。
「サブでも、チームのためにやってくれている。そういう選手の力をもらいたいんですよ。いつも仲良くしているのもあるけど、ショウタの気持ちの部分で見習いたいところもたくさんある」
チームにはチョン・ソンリョンという絶対的な守護神がおり、2番手である新井には、出場機会は滅多に巡ってこない。今季の公式戦には全試合に帯同されているが、出場したのは天皇杯2回戦の明治大学戦のみだ。
だがベンチから味方を鼓舞し、チームを盛り立てて勝たせようとする熱い姿勢は、いつも変わらない。それはチームメートが皆、認めるところだ。だからキャプテンの小林は、縁の下でチームを支える新井の思いを大事にする。
「自分が出たいけど、出られない。でもチームを勝たせてくれという思いが、パワーが伝わってくる。(闘魂注入で)半分は自分のゴールだと思っているみたいですけど(笑)、本当にあいつのおかげです」
「痛いぐらいの愛情でガツンと」
FC東京との天王山で達成した小林のJ1通算100ゴール。
新井による闘魂注入は、この試合前にもあったのだろうか。試合後、ミックスゾーンにいた報道陣による囲みの輪がようやく解けたところで、そっと小林に尋ねてみると、笑顔を見せてこう答えてくれた。
「もちろん。痛いぐらいの愛情で、ガツンとやってもらいましたよ」
ストライカーがゴール前で託されるボールは、ピッチ上で味方が必死につないできた魂のこもったものだと言われる。2010年に川崎フロンターレでプロになった小林悠は、その魂を100ゴールという数字で示してきた。そしてゴールすると負けないという不敗神話も38試合に伸びている。
でも、それだけではない。
今季の小林悠というストライカーの背中には、ピッチに立てない味方の思いもしっかりと宿っているのである。
それも、少し痛いぐらいの熱い思いが。