月刊スポーツ新聞時評BACK NUMBER
ノムさんがボヤキ、エモやんが叱る。
阪神の「矢野ガッツ」が謎の論争に。
text by
プチ鹿島Petit Kashima
photograph byKyodo News
posted2019/06/30 08:00
ベンチも一体となって喜びを共有する今季の阪神。選手にも浸透する「矢野ガッツ」は、清水ヘッドコーチ(中央)の提案で導入された。
微差がいつの間にか大差になる。
私が「矢野ガッツ」について最も納得したコラムは次だ。ノムさんが甲子園でボヤく前日の『デイリースポーツ』。
『雄星が語る「微差は大差」』(元トラ番キャップ・吉田風 取材ノート6月22日)
記者は『Number』編集者からシアトル・マリナーズの菊池雄星の著書が届けられたので読んでみたという。菊池が中学2年のときに記し始めた野球日誌をまとめた本だ。
その中に「微差は大差」という言葉があり、記者は自分なりに解釈をする。
《例えば、神戸の街で同じメニューを出しているカフェが多数あるなかで、お客が「あの店へ行こう!」となるのは、店員の笑顔がいいとか、メニュー表の気遣いが嬉しいとか、微差。でも、その微差がいつの間にか大差になるのだ。》
大事なのは選手にどう届いているか。
そして最後は矢野監督のガッツポーズについて。
《虎将が今年からチームに馴染ませた〈笑顔〉そして〈ガッツポーズ〉である。そんなことやったところで…と揶揄する人も確かにいる。》
でも、
《「俺は楽しむ」と矢野燿大が始めた〈微かな〉プラス思考が、143試合×9=計1287イニング以上積み重ねたとき、今は想像もつかない何か〈大差〉が生まれるような気が、僕はする。》
これを読んで思った。他人はいろいろ言うが大事なのは「矢野ガッツ」が選手にどう届いているかだろう。悪影響なのか、否か。
そう考えると、そもそも大物OBが現役だった頃と今では選手の気質が違う。時代も進んだ。「なんちゃらハラスメントとか気にしていたら、プロ野球は成立しないぞ」というが、今の選手に合うやり方を考えるのも監督の務めだ。勝つために。
だったら「微差」でもいいから、若手が心地よくできる環境を率先してつくる矢野監督はとても「新しい」のではないか。そんなことを考えさせてくれたコラムだった。