“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
千葉の2強を倒し、33年ぶりの全国へ。
日体大柏高校とレイソルの相思相愛。
posted2019/07/01 07:00
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph by
Takahito Ando
一昨年、千葉県に激震が走った。
「インターハイの千葉県の出場枠が将来的に減らされる」
今年、それが現実となった。これまでインターハイは千葉から2校が出場できたが、今年から県全体のサッカー部登録校数が200を割った地域は2から1と減枠となり、千葉だけではなく、埼玉、愛知の3県がその対象となったのだ。
千葉が1枠になることは、他の県と比べて重みが違う。ご存知のとおり、千葉はサッカー激戦区と言われる地域だ。このニュースを耳にした多くの人たちは、「市立船橋と流経大柏のどちらか1校しかインターハイに出られないのか」と思っただろう。それだけこの2校は全国的に圧倒的な存在感を放つ強豪校である。
過去のインターハイを見ると、市立船橋が9回、流経大柏が2回も全国制覇を成し遂げている。しかも、そのうち2008年、'13年、'16年大会では両校が決勝戦で相見えている('08年は雷による中止のために両校優勝)。
しかも、この2校だけではなく、千葉県勢では八千代が1回、習志野が1回インターハイを制しており、過去53回の大会のうち、実に12回(両校優勝があるため)も千葉の高校が制していることになる。しかもここ10年では実に5回も。
この事実がどれだけ重いかは分かっていただけるだろうか。県内の高校でサッカーをしている人間にとっては、インターハイに出ることがどれほど難しくなったかは自明の理であった。
伏兵・日体大柏を率いる酒井直樹監督。
だが、この1枠減を超える激震が千葉に走った。その1枠を獲得したのは、市立船橋でもない、流経大柏でもない、伏兵の日体大柏だった。
「選手は何をもって成長するかというと、判断して決断すること。それには確固たる自信と勇気が必要。彼らにとって自信をつけさせる1番の薬は、やはり『勝利』なんです。僕が高校サッカーに携わってから、1番驚いたのが、1つの勝利でこんなに選手が変わるのかということ。同じ人間とは思えないくらい変わることを、日体大柏でやってきて何度も経験させてもらいました。勝つことって子供たちにとって本当に重要なことなんだなと感じました」
こう語るのは、日体大柏を率いる酒井直樹監督だ。
酒井監督は1994年に当時JFLだった柏レイソルに加入すると、翌年のJリーグ昇格を経験。'01年まで柏でプレーし、'02~'03年にコンサドーレ札幌でのプレーを最後に現役を引退。その後、柏に戻り、育成部門スタッフをやっていた。