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石川祐希の進化、差を埋める術。
NLで2敗も日本男子バレーに兆し。
text by
田中夕子Yuko Tanaka
photograph byItaru Chiba
posted2019/06/17 11:15
ネーションズリーグ東京大会初戦のアルゼンチン戦で28得点を挙げ快勝の原動力になった石川祐希。
変化を求めたイラン、変わらない日本。
石川や柳田、古賀のように世界のトップリーグで戦う日本人プロ選手の存在が牽引し、Vリーグではミハウ・クビアクやドミトリー・ムセルスキーのようなまさに世界トップと言うべき選手がプレーし、外国人指導者も増えた。戦術、技術も成長を遂げ、世界のスタンダードが日本でも少しずつ浸透し、ようやくここまで進んできた。それは間違いない。
だが、だからこそ悔やまれてならないこともある。
東京ラウンド第3戦。イラン戦での完敗後、ミックスゾーンで福澤達哉が言った。
「長らくアジア1位の座をイランに取られていますが、昔はライバルであっても負けることがなかった相手と10年で差が開いた。いつの間にかイランを格上に見ているのが僕は悔しいですし、そこをはね返していかないとこの先の日本の再建はないと思います」
名将を招聘、育成・強化に成功。
'11年、イランはフリオ・ベラスコ氏を監督に招聘した。かつてイタリアやアルゼンチン代表を率い、国際バレーボール殿堂入りを果たした名将は日本代表の監督就任を希望したにも関わらず、日本協会は北京五輪に出場した植田辰哉監督の続投を決めた。
変化を求めたイランと、変わらないことを求めた日本。
その結果、トップだけでなくアンダーカテゴリーのスタッフも欧州から招聘したイランは若年層の発掘、育成、強化に成功。代表選手全員がプロであり、欧州各国でプレーするのは当たり前。
それは'17年にU-19世界選手権で頂点に立ち、ネーションズリーグにも出場した若手選手も同様だ。もともと高いフィジカル能力を持つ選手が、さらにレベルの高いリーグで技を磨き、代表チームになれば組織としてプレーする。
気づけばイランと日本の形勢は逆転し、「アジア王者」の称号に留まらず、イランは世界の表彰台を狙えるチームへと飛躍を遂げた。